障害年金の審査が厳格化?報道では指摘されない「みんなのねんきん」の現場の実感とは

社会保険労務士 岡田真樹

岡田真樹 みんなのねんきん社労士法人代表

大学卒業後メーカー勤務中に左手を機械に巻き込まれ、親指以外を失う大ケガを負う。その後は障害者雇用の枠で聴覚・発達・精神・身体障害を持つ方々と働いた経験を持つ。障害年金の手続きを自ら行なったことを契機に社会保険労務士の道へ。2021年より現職。年間約1000件の相談に応じている。

【みんなのねんきん】岡田社労士

岡田真樹

みんなのねんきん社労士法人代表

ここだけの話、今回はこんな話です

2025年3月以降、精神障害による障害年金の不該当者が増加しているという報道が頻繁に行われています。

中には、2024(令和6)年度の障害年金の不支給決定が3万件になるとの報道もあります。

最新の当該年度の統計はまだ発表されていないのですが、例年は不支給決定数は約1万件くらい。

一気に3万件に急増するというのはにわかには信じられません。

また、

このような報道は、障害年金の請求を検討されている方、特に精神疾患を抱えている方にとっては、不安を感じさせるものと思います。

そこで、今回は障害年金の専門家として、この報道をどのように捉え、日々の業務に臨んでいるか、現場の視点からお話ししたいと思います。

ここだけの話、障害年金の不支給が増えている?

共同通信社を中心に不支給増加の報道がされている

2025年3月以降、障害年金の不支給決定が増加しているとの報道がされています。

【独自】障害年金、不支給が増加か 24年、精神・発達は2倍

(2025年3月13日 共同通信社)

「あなたの年金申請は認められません」うつ病女性の涙 精神・発達障害で不支給が2倍増?ナゾを追った

(2025年4月11日 47News 共同通信社)

【独自】障害年金判定、判断誘導の可能性 機構、医師の傾向と対策文書作成

(2025年4月29日 共同通信社)

一連の報道では、障害年金の不支給が増加した要因として、主に以下の点が挙げられています。

  • 令和4年からの日本年金機構での審査方法の変更
  • 令和5年10月の障害年金審査のセンター長(組織長)の交代

令和4年からの日本年金機構での審査方法の変更では、障害認定の専門性を高めるため、業務フローが見直されました。

その中で、「年金機構職員が認定に関する事項について、事前確認票を作成する仕組み」が要因であると報道されています。

また、共同通信社によれば、日本年金機構職員が「令和5年10月に就任したセンター長が要件を厳格化したこと」が増加の要因とされています。

とすれば、

障害年金手続代行専門の弊社においても影響が出ているはず

最近の弊社における実態を踏まえて、障害年金不支給増加の報道について考えてみます。

みんなのねんきんではどうなのか?

岡田社労士
岡田社労士
障害年金不支給決定が増加しているのなら、弊社の手続代行においても、不支給決定が増えているはず?

と思ったのですが、私たちの実感は報道のニュアンスとは異なります。

率直に言えば、

岡田社労士
岡田社労士
いやぁ、そんなことないのでは?

というもの。

弊社の取扱い件数などのデータを見てみても、私たちが適切にサポートし、申請できた案件において、「ここ数年で不支給決定率が劇的に上昇した」という事実はありません。

実際、弊社で相談を受けた”重い精神障害状態と判断できた方”については、そのほとんどが障害年金に該当し受給できています。

ここで、

厚生労働省の令和3年~令和5年度の統計を見てみると、障害年金の不支給・不該当件数は、およそ1万件で推移しています。

  • 令和3年度:10,130件(不該当率:7.8%)
  • 令和4年度:10,004件(不該当率:7.7%)
  • 令和5年度:11,947件(不該当率:8.4%)

(出典:障害年金業務統計 令和3年度、令和4年度、令和5年度 厚生労働省年金局、日本年金機構)

これは精神疾患や肢体の障害など全てを含めた障害年金全体の数字です。

報道では「精神障害の障害年金3万件不該当」とされています。

いきなり3倍にも不支給が膨れ上がったとすれば、弊社の手続き代行業務においても影響が出てくるはずなのですが・・。

報道されている数字は、近年の数字との整合を考えると、にわかには信じられないのです。

障害年金不支給増加の背景事情は別にある?

では、なぜ「不支給が増加した」という報道が出るのでしょうか?

上で紹介した障害年金業務統計によると、障害年金の請求件数のうち、精神障害を理由とするものが急増しています。

具体的には、令和4年から令和5年にかけて約1.2万件も増加しています。

令和3年・令和4年は、ほとんど同じ請求件数なので、直近で急増していることがわかります。

ここは着目すべきところです。

では、この請求件数の増加は、何が要因でしょうか。

私の実感としては、うつ病などの精神疾患が障害年金の対象になることが一般に浸透してきたことにあると考えます。

ネットで情報収集ができるようになったことで、「私にも障害年金をもらえるかもしれない」「自分で請求してみよう」と手続きされる方が増えていると考えられます。

グーグルの検索で、「精神疾患 障害年金」の件数も近年増加しています。

この実感を裏付けるものがあります。

それは、令和5年以降「自身で請求を行ったが認定されなかった」「請求に必要な書類の準備が難航している」という弊社への相談が増えているからです。

つまり、

請求者全体のパイが増え、その中でも専門知識が無い方の手続き件数が急増したため、結果的に不支給となる件数が増加した

という側面があると考えられるのです。

報道では、日本年金機構、つまり障害年金を審査する側のことのみが挙げられていますが、請求する側の側面を指摘するものはありません。

審査側の事情のみを捉えて、「審査が厳しくなったから障害年金の不該当が増えた」という分析はあまりに一面的過ぎるのではないでしょうか。

その後はどうなった?

この報道を受け、国会においても問題が取り上げられました。

厚生労働大臣は「実態把握に向けて調査し、1カ月後に結果を公表する」と回答。

結果、2025年6月11日に厚労省から調査結果の発表があった次第です。

「令和6年度の障害年金の認定状況についての調査報告書」について|厚生労働省
「令和6年度の障害年金の認定状況についての調査報告書」を公表します|厚生労働省

www.mhlw.go.jp

発表を受けての弊社の見解は次回以降、コラムにまとめたいと思っています。

ここだけの話、自分でやるからうまくいかないのです

今回の報道に接し、精神障害での障害年金の請求を躊躇される必要はありません。

適切に準備を行い、ご自身の状況(病歴、現在の症状、日常生活の困難さなど)を正確かつ丁寧に伝えることで、障害年金を受給することは十分に可能です。

何のノウハウや専門知識がない方が、自身で手続きを行おうとするからうまくいかないのです。

また、精神疾患により、判断力・注意力が低下している方も多くいらっしゃいます。

そのような方が、一般の方でさえ難しい手続きを自身で行うことは大変だと思います。

裁判をするのに弁護士に依頼するのが普通であるように、障害年金の手続きをするならそれなりの専門家に頼むべきです。

もし、手続きの複雑さや、ご自身の状況をどのように伝えればよいかなどに不安を感じるようでしたら、みんなのねんきんにご相談ください。

毎日毎日、障害年金手続きのご相談のみを受ける専門会社ならではのノウハウを持っています。

弊社では、状況を丁寧にヒアリングし、認定の可能性を高めるためのきめ細やかなサポートを提供することができます。

センセーショナルな報道に惑わされず、本来であれば受け取れたはずの障害年金が不支給にならないよう、最善の選択をしてください。

ここだけの話、今回のまとめです

【みんなのねんきん】岡田真樹社会保険労務士

今回は、障害年金を請求する際の診断書の重要性について解説しました。

ポイントは以下のとおり。

  • 2025年3月以降、障害年金の不支給決定が増加しているとの報道がされている
  • 報道によれば、日本年金機構での審査方法の変更、障害年金審査のセンター長の交代による審査の厳格化の指示の可能性があるとのこと
  • 報道とは逆にみんなのねんきんでは不支給が増加した実感がない
  • 精神疾患による年金請求がノウハウの無い一般の人に広がり、結果として不支給が増えているのではないか
  • 今後の厚労省の調査結果を精査する必要がある

精神障害による障害年金の不支給決定増加という報道が先行していますが、その理由は現時点では明確ではありません。

私たちの近年の実績からは、不支給決定が特段増加しているとは感じていません。

むしろ、請求件数が増加する中で、より専門的なサポートの必要性が高まっていると認識しています。

精神障害による障害年金請求は専門性が高く、ご自身の状況を正確に伝え、適切な書類を作成することが重要です。

報道に不安を感じる方もいらっしゃるかもしれません。

諦めずに、ご自身の権利について検討していただきたいと思います。

  • この記事を書いた人
社会保険労務士 岡田真樹

岡田真樹 みんなのねんきん社労士法人代表

大学卒業後メーカー勤務中に左手を機械に巻き込まれ、親指以外を失う大ケガを負う。その後は障害者雇用の枠で聴覚・発達・精神・身体障害を持つ方々と働いた経験を持つ。障害年金の手続きを自ら行なったことを契機に社会保険労務士の道へ。2021年より現職。年間約1000件の相談に応じている。

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