こんなに苦しいのに不支給?「痛み」による障害年金を決定に結びつけた秘策

社会保険労務士 岡田真樹

岡田真樹 みんなのねんきん社労士法人代表

大学卒業後メーカー勤務中に左手を機械に巻き込まれ、親指以外を失う大ケガを負う。その後は障害者雇用の枠で聴覚・発達・精神・身体障害を持つ方々と働いた経験を持つ。障害年金の手続きを自ら行なったことを契機に社会保険労務士の道へ。2021年より現職。年間約1000件の相談に応じている。

【みんなのねんきん】岡田社労士

岡田真樹

みんなのねんきん社労士法人代表

ここだけの話、今回はこんな話です

ご存知ですか?

厚生労働省が定めた障害年金の判定要領には「疼痛(とうつう=痛み)は原則として対象とならない」のです。

つまり、痛みがあるだけでは、どんなに激しい痛みでも障害年金を受け取れないのです。

”痛み”を伴う障害年金申請は、なぜ難しいのか。

みんなのねんきんが、この壁をどう乗り越え、どのような手法で年金決定に結びつけたのか。

このコラムで詳しく解説します。

ここだけの話、今回はどんな事例?

報道された大阪在住の女性の事例

2025年9月28日、共同通信社から障害年金に関するニュースが報道されました。

最重度なのに障害年金「不支給」 寝たきり女性、痛みは対象外|47NEWS(よんななニュース)
最重度なのに障害年金『不支給』 寝たきり女性、痛みは対象外|47NEWS

 身体障害者手帳が最重度の1級でほぼ寝たきりの女性(58)が、国の障害年金を不支給と判定されていたことが28日、分かった。女性は背骨のゆがみなどのため全身に痛みがあって動けないが、障害年金は痛みに伴う ...

www.47news.jp

報道の内容はこうです。

身体障害者手帳が最重度の1級。

ほぼ寝たきりの生活を送る女性が、障害年金を申請しました。

しかし、結果は「不支給」と判定された、というもの。

もう少し具体的に状況を見てみましょう。

大阪市在住の58歳の女性。

2022年に新型コロナに感染。

後遺症などで体力が急激に落ち、何度も転倒しました。

2023年には全身の痛みや呼吸苦で救急搬送されます。

「脊椎後彎(せきついこうわん)」などと診断されています。

摂食障害や心不全も併発し、体重は一時約20キロも落ちたといいます。

入院中に身体障害者手帳1級(最重度)と認定。

車いす生活となり、現在はほぼ寝たきりの状態です。

これほどの状態であれば、当然、障害年金が受給できると考えるのが普通でしょう。

しかし、結果は「不支給」。

女性は「現実に体を動かせないのに、不合理で納得できない」と訴えています。

実は、私自身も、左手四指欠損の障害があります。

失った指の部分は、今も四六時中、痛みや痺れ(幻肢痛 げんしつう)があります。

しかし、この「痛み」や「痺れ」が理由で、障害がより重いと判断されることはありません

あくまで「指を4本欠損している」という「客観的な状態」だけで障害状態が判断されるのです。

みんなのねんきんにも同様な相談がありました

私たちのもとにも、同様の不安を抱えたAさんから相談が寄せられました。

糖尿病の合併症である「糖尿病性神経障害(末梢神経障害性疼痛 まっしょうしんけいしょうがいせいとうつう)」と診断されていました。

Aさんの場合、糖尿病による代謝障害そのものについては、インスリン治療により数値が安定していました。

そのため、障害年金の対象にはならない状態です。

しかし、合併症である神経障害(疼痛)が深刻化していたのです。

痛みの状況は、

「最初は、足の裏に薄い紙が張り付いているような違和感がずっとある程度。」

「次第にそれが『灼けるような痛み』や『針で刺されるような激痛』に変わってきた」

とのこと。

痛みは四六時中続き、夜も眠れません。

日中も集中力が続かない。

少し歩くだけで足に激痛が走るため、外出もままならない。

さらには、手の指先にも強いしびれと痛みがありました。

箸を持ったり、字を書いたりする細かい作業も難しくなっていました。

日常生活もままならず、仕事も続けることが困難になりました。

しかし、主治医に障害年金の相談をしても、こう言われてしまいました。

痛みは数値化できないし、検査結果にも表れにくいから、診断書を書くのは難しい

ご自身で調べても、「疼痛は対象外」という情報ばかり。

まさに八方ふさがりの状態で、みんなのねんきんにご相談となりました。


「痛み」は、ご本人にとって最もつらいものです。

この痛みが日常生活を困難にしている最大の原因だからです。

しかし、障害年金の受給には高いハードルがある。

どちらの事例も障害年金を受け取るために、何か解決策がないものでしょうか。

今回は痛みによる障害年金申請の事例について取り上げます。

ここだけの話、何が問題なのか?

なぜ、痛みが激しい状態なのに、障害年金が不支給とされたのでしょうか。

上の大阪在住の方の報道記事によれば、壁となったのはある一文でした。

厚生労働省が定めた障害年金の判定要領にある、

疼痛は原則として対象とならない

という一文です。

実際に、痛みによって日常生活を送ることが難しい。

それにもかかわらず、痛みは制度上は原則として評価の対象外とされています。

この現実に、多くの方が絶望を感じてしまうかもしれません。

「痛みで動けない自分は救われないのか」と。

しかし、諦めるのはまだ早いです。

みんなのねんきんでは、これまで痛みによる障害年金が決定された事例があります。

上でご紹介したAさんの症状「末梢神経障害性疼痛(糖尿病性神経障害)」。

激しい疼痛を伴う症状があるのですが、弊社が手続きを手掛けたことで、障害年金の決定を受けた事例があります。

「疼痛は原則対象外」なのに、なぜ決定されたのでしょうか?

障害年金受給に結びつけたみんなのねんきんの手法はどのようなものだったのか。

そこが問題となります。

ここだけの話、なぜ疼痛で障害年金は難しいのか?

上の報道の事例や弊社に相談されたAさんの事例のように、なぜ「痛み」が障害年金の申請においてこれほど高い壁となるのでしょうか。

この「認定の厳しさ」は、最新の統計データにも表れています。

障害年金業務統計(令和6年度決定分)」によると、近年、障害年金の審査で「不該当(不支給)」とされる割合が全体的に増加傾向にあります。

特に、Aさんのような糖尿病性神経障害も含まれる「内部障害」の不該当率が急増しているのです。

これは、審査側が「客観的な証拠」や「認定基準への該当性」を、より厳格に求めていることの表れと言えます。

理由は大きく3つあります。

1 認定基準における「原則対象外」の壁

最大の理由が、報道でも指摘されていた厚生労働省の「国民年金・厚生年金保険 障害認定基準」及び関連する障害状態を定める判定要領です。

そこには明確に「疼痛は原則として対象とならない」と記載されています。

障害年金の審査は、あくまでもこの「認定基準」に基づいて行われます。

審査側(日本年金機構)の視点に立てば、「どれほど痛みがつらいか」というのはご本人の主観的なもの。

「その痛み(あるいは原因疾患)によって、認定基準に定められた『障害の状態』に該当しているか」

そこを客観的に判断する必要があるのです。

「痛み」そのものは、この「客観的な障害の状態」として定義されていません。

そのため、「痛みでつらい」という訴えだけでは、「認定基準に該当しない」と判断されてしまう可能性が非常に高いのです。

2 「痛み」という症状の証明の難しさ

これは、以前に私が執筆したコラム「多くの相談を受けてきたから実感!統合失調症で障害年金はここが難しい」で解説した「陰性症状」の証明の難しさと非常に似ています。

多くの相談を受けてきたから実感!統合失調症で障害年金はここが難しい

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統合失調症の陰性症状(意欲の低下など)は「内面的なもの」です。

それがいかに日常生活に影響しているかを客観的に証明するのは難しいです。

同様に、「痛み」もまたご本人にしかわからない主観的な感覚」です。

どれくらい痛いのか?

どんな種類の痛みなのか?(ズキズキ、ジンジン、ピリピリ)

その痛みによって、具体的に「何が」「どれくらい」できないのか?

これらを、診断書や「病歴・就労状況等申立書」だけで、審査側に正確に伝えることは非常に困難です。

ご本人が「痛くて何もできない」と記載しても、審査側からは「客観的な証拠がない」とみなされてしまう危険性があります。

3 診断書様式の選択ミス

障害年金の診断書用紙は、障害の種類によって分かれています。

眼、聴覚・鼻腔・平衡・そしゃく、肢体、精神、呼吸器、循環器、腎・肝・血液、その他

の8種類です。

いずれかの診断書様式を選択して、医師に記入してもらうわけです。

「痛み」が主症状の場合、どの診断書を使えばよいか迷うケースが少なくありません。

例えば、原因疾患がはっきりしない場合や、難病の場合、「その他の障害用」の診断書が選択されることがあります。

しかし、「その他の障害用」診断書は、主に日常生活の状況を文章で記載する欄が中心です。

「痛みで動けない」ことを文章で説明しても、審査側からは「主観的な訴え」と捉えられがちです。

「客観的な機能障害」として評価されにくい側面があります。

報道の女性がどの診断書を使ったかは不明です。

もし「痛み」の訴えが中心の診断書であったなら、それが「原則対象外」の壁を越えられなかった一因かもしれません。

ここだけの話、みんなのねんきんはこう手続きを行った

みんなのねんきんに相談されたAさんの事例は、結果的に障害年金の受給に結びつけることができました。

それは、弊社が障害年金の「審査側の視点」を理解しているからです。

「痛みがあるから」という訴えだけでは不十分。

「痛みによって、身体のどの機能に、どれほどの障害が起きているか」。

これを「客観的な証拠」として証明できたことが理由です。

みんなのねんきんが具体的にどのような手法を採ったのか。

以下、掘り下げて解説しましょう。

手法1 「痛み」を「肢体の障害」として証明する

私たちが、先ほどのAさん「末梢神経障害性疼痛」の事例で採用した診断書。

それは、「肢体(したい)の障害用」の診断書でした。

「痛み」を中心的に障害状態を訴えたいのになぜ「肢体」なのか?

それは、「痛みによって、手足の機能がどれほど損なわれているか」

これを客観的に証明するために、この診断書が最も適していたからです。

「その他の障害用」診断書は、「文章(主観)」での説明が中心になりがちです。

一方、「肢体の障害用」診断書には、以下の重要な評価項目があります。

これらすべてが「客観的な証拠」となり得ます。

関節可動域

関節がどれくらいの範囲を動かせるかを「角度」で測定します。

Aさんの場合、足首や膝を動かすと激痛が走るため、可動域が制限されていました。

この状態を、医師に具体的な「角度」として記載してもらいます。

筋力

手足の筋力を「6段階(5~0)」で評価します。

痛みがあると、力を入れること自体が困難になります。

その結果、筋力が「低下している」と評価されます。これも客観的な数値です。

日常生活における動作の評価

「立つ」「歩く」「座る」「階段を昇る・降りる」

「手指の細かい作業(箸、字、ボタン留めなど)」

これら日常生活の動作が、どの程度できるかを評価する詳細な欄があります。

障害年金を審査する側は、これらの「角度」や「段階評価」、「日常生活における動作の具体的な困難さ」を見ます。

そして、「これだけ機能が低下しているならば、認定基準に該当する」と判断するのです。

手法2 徹底したヒアリングと医師への情報提供

しかし、ただ「肢体の障害用」診断書を使えばよいわけではありません。

医師がAさんの「痛みによる機能低下」を正確に把握していなければ、診断書に適切な内容を記載してもらえません。

そこで、主治医に対して、本人の日常生活の困難さの情報提供を行います。

このアプローチは、精神障害の障害年金申請サポートで行っている手法と全く同じです。

医師に情報提供をするためには、本人の日常生活の困難さを丁寧にヒアリングする必要があります。

それを「障害年金を審査する側に伝わる言葉」に翻訳して、医師に情報提供するのです。

「末梢神経障害性疼痛」のAさんに対し、私たちは以下のような点を具体的にヒアリングしました。

  • (歩行)痛みが出ずに連続で歩けるのは何分(何メートル)ですか?
  • (階段)手すりが必要ですか? 痛みで一段ずつしか登れませんか?
  • (手指)痛みやしびれで、ペットボトルのキャップが開けられますか?
  • (食事)お箸を正確に使えますか? 痛みで食べ物を落としてしまうことは?
  • (着替え)シャツのボタンを留めること、靴下をはくことに、どれくらい時間がかかりますか?

これらのヒアリング内容を詳細な資料にまとめ、医師にお渡ししました。

これにより、医師は「痛み」という主観的な訴えの裏にある「客観的な機能低下」を具体的に把握できます。

診断書の「関節可動域」や「日常生活における動作」の欄に、実態に即した評価を記載することが可能になりました。

(例:「自発的にはできるが、痛みのため非常に時間がかかる」「補助具が必要」「ほとんどできない」など)

結果として、「痛み」が原因であっても、「それによって生じている深刻な肢体(手足)の機能障害」が診断書上で客観的に証明されました。

そして、それが障害年金の認定に至ったのです。

報道のケースについても、Aさんと同じように「痛みによる客観的な機能障害」を証明する方法をとっていれば、認定されていた可能性は非常に高かったと言えるでしょう。

重要なのは、繰り返しになりますが、「審査側の視点」に立つことです。

彼らが評価できる「客観的な証拠」を、適切な様式で提示することができれば、障害年金の受給につながるのです。

ここだけの話、今回のまとめです

【みんなのねんきん】岡田真樹社会保険労務士

今回は、痛みによる障害年金請求の難しさを解説しました。

ポイントは以下のとおり。

  • 障害年金の判定要領には「疼痛は原則として対象とならない」とされている
  • その理由は、痛みは主観的な感覚のため、客観的に判定できないからである
  • 報道と似た事例について、みんなのねんきんは「肢体の障害用」の診断書を用い、客観的な障害状態を証明する手法を採った
  • 障害年金手続きは「審査する側」の視点に立って客観的な証拠を提出することが重要である

今回取り上げたニュースは、非常に理不尽とも言える事例でした。

身体障害者手帳1級(最重度)という状態にもかかわらず、障害年金の「疼痛は原則対象外」 という基準によって不支給とされたのです。

専門家からは「同様の例は他にも多くあり、制度の構造的な問題だ」との指摘もされています。

確かに、痛みというご本人にとって最もつらい症状が、制度上評価されにくい。

書類のみの判定方式である障害年金審査の根本的な問題は存在します。

しかし、だからといって諦める必要はありません。

重要なのは、戦略です。

「痛くてつらい」という主観的な訴えで終わらせてはいけません。

その痛みによって、日常生活や身体機能(手足の動きなど)に、どのような客観的な支障が出ているのか

これを証明することです。

そのためには、2つの点が不可欠です。

ご自身の状態を最も適切に表現できる診断書の様式(今回の例では「肢体の障害用」)を選択すること。

そして、医師に実態を正確に伝えるための情報提供(ヒアリングに基づく資料作成)を行うこと。

これは、発達障害の方や統合失調症の方が申請で困難を感じるのと同じです。

ご本人だけ(あるいはご家族だけ)で対応するには非常に高いハードルです。

もしあなたが「痛み」を伴う症状で障害年金を考えているのであれば、「どうせ痛みは対象外だから」と諦める前に。

ぜひ一度「みんなのねんきん」にご相談ください。

弊社には、その「痛み」の裏にある「障害」を証明するノウハウがあります。

出典・参考にした情報源

障害年金業務統計令和6年度
障害年金業務統計令和6年度

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  • この記事を書いた人
社会保険労務士 岡田真樹

岡田真樹 みんなのねんきん社労士法人代表

大学卒業後メーカー勤務中に左手を機械に巻き込まれ、親指以外を失う大ケガを負う。その後は障害者雇用の枠で聴覚・発達・精神・身体障害を持つ方々と働いた経験を持つ。障害年金の手続きを自ら行なったことを契機に社会保険労務士の道へ。2021年より現職。年間約1000件の相談に応じている。

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