ここだけの話、今回はこんなお話です
今回は弊社で相談を受けてから実際に障害年金が決定されるまで1年8カ月も長い時間がかかってしまったケースをご紹介するコラムの後編です。
一般的に手続きに長時間かかる理由は、「必要な書類が集められない」「書類を作成できない」などが主なものです。
ご本人が手続きを進める場合、このような事情により時間がかかり、申請を諦めてしまうことがあります。
私たち専門家が手続き代行をする場合も同様で、このような事情で申請手続きを中断せざるを得ないこともあります。
今回ご紹介するケースでも、何度もあきらめそうになりましたが・・・なんとか、年金決定までに至りました。
何が原因で、これほど時間がかかってしまったのでしょうか?
今回の後編では前編の続きから、弊社がどう対応したのかをお伝えいたします。
ここだけの話、こんな事例でした
長時間かかってしまった経緯は前編で詳しくまとめています。
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どうしてこうなった?障害年金決定までに1年8ヵ月かかった、ある事情とは 前編
ここだけの話、今回はこんなお話です 今回は弊社で相談を受けてから実際に障害年金が決定されるまで1年8カ月も長い時間がかかってしまったケースをご紹介します。 一般的に手続きに長時間かかる理由は、「必要な ...
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簡単にまとめると、
- 弊社に寄せられた抑うつ患者からの電話相談
- うつ状態が長く続いていたものの、適切な医療を受けられず、医療機関に対する不信感が増していた
- その後、通院できる医療機関が見つかるも、相性の良い医師は非常勤で、信頼関係構築には時間がかかりそう
- なんとか当該医師と信頼関係を築き、「うつ病」と診断されるも、医師は障害年金に対して消極的だった
といったところです。
この状況下で、弊社でどのように障害年金受給に結びつけたのかが、今回の後編です。
ここだけの話何が問題か
医師と患者の信頼関係を最優先に考える
弊社のポリシーとして医師と患者の信頼関係を壊してまで障害年金の手続きを進めることはしません。
このことはこれまでのコラムでも何度も指摘してきました。
専門家によっては、障害年金手続きを優先させるあまり、医師と患者の関係を無視して、診断書を書いてもらうよう無理にお願いする事例もあるようです。
(このような事情の背景には、年金が決定されないと報酬を請求できないという我々の事情も関係しているのかもしれません)。
確かに、
障害年金の請求は国民1人1人に認められた権利であり、その権利行使を支援するのが我々専門家の役目です。
しかしだからといって、
闇雲に年金請求の権利実現を最優先にするという話ではなく、それ以前にまずは医師と患者の関係を最優先で考えるべきです。
障害年金を希望する患者と、症状の診断をする医師の間に立って、我々専門家が全ての関係者が納得できるようにどう手続き代行を進めるか。
これが問題になると考えます。
また、
医師が障害年金に消極的なら、病院を変えるというやり方もあるかもしれません。
しかし、
病院を変える、つまり転院が難しいという相談者の状況も理解しないといけません。
地域による医療機関の数、セカンドオピニオンを受ける治療費が用意できないなど、安易に転院とはいきません。
ましてや、
今回のケースでは、長い時間を掛けてようやく見つけた相性の良い医師です。
相談者と医師との間で悩みに悩む
とはいえ、当該医師は障害年金に消極的・・・。
私の見立てではこの相談者は障害年金を受け取れる客観的な状態にあると判断していました。
障害年金の手続きにおいて、医師による診断書が取得できない限り、請求手続きはできません。
このままですと、障害年金をあきらめざるを得ません。
相談者の意思を何度も確認しました。
「障害年金をあきらめたくない」
「今の医師の元で治療を続けたい」
矛盾のある状況ですが、相談者が「あきらめたくない」と言っています。
医師と患者の関係を壊さないことを最優先で考えつつ、本当に障害年金請求の可能性はないのか、他にやれることはないのか、別に良い方法はないのか。
相談者の希望と医師の診断との狭間で悩みに悩みました。
ここだけの話、こう対応した
判明!医師が障害年金に消極的な理由
悩みながらも情報収集を続けた結果、医師がなぜ障害年金に消極的だったか、その理由がわかりました。
それは、
過去に、別の患者の案件で、障害年金手続きの代理人に診断書の内容を強要されたこと、そして、その代理人とトラブルになったことがあるとのことでした。
その専門家が請求手続きを強引に進めようとしたことが原因です。
我々専門家は基本的には患者側の立場ですから、医師と患者の関係も悪化したことでしょう。
つまり、当該医師は第三者が介入することに不信感を持っていたのです。
このような医師の状況を理解しないといけません。
弊社が最優先に考えていることは、医師と患者の信頼関係です。
強引に手続きを進めるようなスタンスではありません。
そこで、
弊社のスタンスを理解してもらうため、医師の先生にお手紙を書くことにしました。
内容は、客観的に障害年金の請求に必要な要件(初診日要件、保険料納付要件)を満たしており、申請することは可能な状態であること。
そして、
最も伝えたいこととして、
- 先生が経験された過去の経緯を当方は理解している
- 先生と患者との関係性を考えて、最大限尊重している
- 治療が止まってしまうことだけは避けたいので、患者のために今後も先生に診療を続けていただきたい
- 弊社は、患者(相談者)に寄り添うことをビジョンに掲げて代理業を行っている
以上を伝えました。
やはり、障害年金の申請以前に、治療が止まってしまうことだけは、避けねばなりません。
相談者には、診断書の作成が難しいと言われたとしてもこれまでと同じように通院して、症状をしっかり伝えるようアドバイスしました。
手紙を送ってから3か月後に事態急変
手紙を送って3か月ほど経ったころ、当該医師より、診断書を作成してもいいとの連絡がありました。
手紙により、患者の状況を理解できたとのこと。
大きく前進しました。
そして、私からも診断書を作成しやすいよう情報提供をしっかり行いました。
この3か月の間も、医師と相談者との信頼関係は良好なまま持続しており、医師も患者の症状・状況を的確に把握されていました。
最終的に書いてもらった診断書にもその点が確実に反映されており、ようやく年金請求書を提出できました。
この時点で既に最初の相談から1年2カ月が経過。
最終的に、最初の相談から初回の入金まで1年8カ月もの時間がかかったのはこういった経緯があったためです。
おそらく他では断られていたのでは?
通院先の選定問題、医師との信頼関係の問題、第三者に不信感を持つ医師と専門家の関係・・・。
多くのハードルがありましたが、なんとか年金受給に結びつけました。
ここだけの話ですが、専門家によっては最初の相談の段階で断られてしまう可能性が高かったと思います。
というのも、
初回相談時は、現在の病名も確定していませんし、通院もしていない状況です。
不確かな状況で、相談に応じていくことは難しいからです。
そして、
医師が診断書を作成してくれない場合の対応は非常に難しい。
今回、「何としても診断書を作成してもらう!」と行動していたら、全く違う結果になったと思います。
医師と患者の関係が壊れて通院困難 → 治療ができず、症状が悪化 → 悪化しても通院していないので障害年金の手続き不可
これは最悪の結果です。
各人の事情に応じて、最もよい方法を考えられるか?
専門家が障害年金手続きの知識・ノウハウがあるのは当然のことです。
それだけではなく、「相談者・医師の事情の理解」「情報収集の手間を惜しまず最善の手を考える」「最後まで諦めない粘り強さ」
これらを常に意識した専門家でありたいものです。
ここだけの話、今回のまとめです
今回は、初回相談から障害年金受給まで1年8カ月もかかったケースについて、前編の経緯の説明に続き、弊社の対応策をまとめました。
ポイントは以下のとおり。
- 専門家によっては断られるケースであっても親身になって相談に応じた
- 情報収集の手間を惜しまず、相談者と医師の事情を理解して全ての関係者が納得できる方法を考え抜いた
- 医師が障害年金に消極的であっても決して諦めず、粘り強く対応を続けた
なぜ、諦めずに対応を続けてこれたか。
みんなのねんきんは「年金をもっと身近に、もっとわかりやすく」を理念に掲げて、その理念実現のためのビジョンとして「年金で障害者に寄り添い、年金で社会に貢献する」を掲げています。
このビジョンを常に心掛けているからだと思っています。
通院されていない事情は、人それぞれです。
うわべだけの事実確認や、すぐに仕事にならないからという理由で、障害年金が必要な方に手を差し伸べない。
障害年金の権利実現のための専門家として、あってはならないスタンスだと思います。
しっかり事情を聞き出すこと、対応方法を粘り強く考え、提案することで、障害年金を必要とする人の力になれるようこれからも精進していきます。
最後に、打開策を考えるコツをご紹介。
それは、1個、2個だけではなく、なるべく多くの方法を考えることです。
「多く」ですので、30個ぐらいは考えるようにします。
事前に数を設定して、あらゆる可能性を考えてください。
その中から、最もよい方法を選び提案することで、良い結果に結びつきます。
弊社ファウンダー(創業者)のシモムーも坂本竜馬の次の言葉が好きだとか。
必ず、解決策はある!という心構えを持っておくことも、多くのアイデアを出すことに必要です。
参考にしてください。
岡田真樹
みんなのねんきん社労士法人代表