「この症状でもらえる?」障害年金を受け取るための障害状態とは?

【みんなのねんきん】岡田社労士

岡田真樹

みんなのねんきん社労士法人代表

ここだけの話、今回はこんな話です

これまで障害年金の相談を受けてきて、最も多いのが「○○という病気・症状だから、障害年金もらえないですか?」というもの。

障害年金を受け取るためには保険料をきちんと納めていることはもちろんですが、「法令で定められた障害状態であること」が必要です。

今回は、この「法令で定められた障害状態」はどのようなものか、弊社で最も相談の多い精神疾患の事例で解説します。

ここだけの話、障害年金を受け取るための「障害」とは?

障害認定日要件に登場する障害状態

障害年金を受け取るためには、3つの要件を満たしていることが必要です。

簡単に説明すると、以下のとおり。

  • 初診日要件:障害の原因となった傷病について初めて医者に掛かった日(初診日)に公的年金制度に入っている
  • 保険料納付要件:一定程度保険料を納めている
  • 障害認定日要件:障害認定日(原則として初診日から1年6カ月経った日)に法令で定められた障害状態である

3つ目の障害認定日要件の「法令で定められた障害状態」はどのような状態か。ここが問題となります。

他の制度における障害とは?

ここで、一言で”障害”と言っても、制度により定義が異なるので注意です。

例えば、障害者の定義となりますが、障害者基本法では、

身体障害、知的障害、精神障害(発達障害を含む。)その他の心身の機能の障害(以下「障害」と総称する。)がある者であって、障害及び社会的障壁により継続的に日常生活又は社会生活に相当な制限を受ける状態にあるもの

と定めています。

身体障害者福祉法では、身体障害者の定義を

都道府県知事から身体障害者手帳の交付を受けたもの

と定めています。

精神保健及び精神障害者福祉に関する法律(精神保健福祉法)では、精神障害者を

統合失調症、精神作用物質による急性中毒又はその依存症、知的障害、精神病質その他の精神疾患を有する者

と定めています。

このように、それぞれの法律で障害者の定義を定めており、完全に一致しているわけではありません。

例えば4級の障害者手帳を持っていて、公的年金の等級は3級までしかないことから「年金は無理?」という誤解が生じます。

そんなことはありません。

各制度で障害・障害者の定義が違うことを前提として理解しておきます。

公的年金制度における障害とは?

では、国民年金法、厚生年金保険法の障害年金では”障害”をどのように定めているのでしょうか。

障害認定基準に記載があります。

国民年金・厚生年金保険 障害認定基準|日本年金機構
障害認定基準

続きを見る

簡単に説明すると、身体又は精神に、法令の別表に定める程度の障害の状態があり、かつ、その状態が長期にわたって存在することを”障害”としています。

ここでいう法令の別表ですが、例えば一番状態が重たい1級には

  • 両上肢の全ての指を欠くもの
  • 両下肢を足関節以上で欠くもの

など、細かく決められています。

したがって、この「法令の別表」の症状に当てはまり、それが長期にわたって存在する場合が、障害年金における”障害状態”なのです。

メモ

法律によると、「障害の状態は政令で定める」となっており、具体的には国民年金法施行令、厚生年金保険法施行令のそれぞれの別表に障害状態の記載があります。

ここだけの話、より具体的に障害状態を解説してみる

精神疾患に特化した障害状態とは

みんなのねんきんに寄せられる相談のほとんどは精神疾患に関するもの。

そこで、ここからはより具体的に、精神疾患に特化して、どのような状態・状況が障害状態となるのか見ていきましょう。

上でご紹介した各政令の別表によれば、障害状態が重いものから1級・2級・3級とあります。

そして、1級・2級については

精神の障害であって、前各号と同程度以上と認められる程度のもの

3級については、

精神又は神経系統に、労働が著しい制限を受けるか、又は労働に著しい制限を加えることを必要とする程度の障害を残すもの

とあります。

3級は、まだイメージしやすいですが、1・2級の「前各号と同程度以上と認められる程度のもの」は、???。

これは、精神障害の直前に列挙されている肢体の障害などの状態と同程度という意味なんです。

ただこれでは依然としてよくわかりません。

精神疾患が障害等級に該当する具体的な症状例

そこで、

障害認定基準には基本事項にその具体的な症状が例示がされています。

1級は、他人の介助を受けなければほとんど自分の事をすることができない程度となります。

例示として

身のまわりのことはかろうじてできるが、それ以上の活動はできないもの又は行ってはいけないもの、すなわち、病院内の生活でいえば、活動の範囲がおおむねベッド周辺に限られるものであり、家庭内の生活でいえば、活動の範囲がおおむね就床室内に限られるもの

としています。簡単にいうと、ほとんど寝たきり状態です。

つぎに2級は、必ずしも他人の助けを借りる必要はないが、日常生活は極めて困難で、労働により収入を得ることができない程度となります。

例示として

家庭内の極めて温和な活動(軽食作り、下着程度の洗濯等)はできるが、それ以上の活動はできないもの又は行ってはいけないもの、すなわち、病院内の生活でいえば、活動の範囲がおおむね病棟内に限られるものであり、家庭内の生活でいえば、活動の範囲がおおむね家屋内に限られるもの

としています。こちらも簡単にいうと、外出できず労働できない状態です。

3級は、労働が著しい制限を受けるか又は労働に著しい制限を加えることを必要とする程度となっています。

詳しい例示は、認定基準にありませんが、そのまま労働に制限を受けている状態と思ってもらえばよいです。

実際に弊社への相談事例で、うつ病で抑うつ状態がひどくなると横になってばかりになってしまうとのこと。

意欲低下のために自発的な活動ができない状態です。

ひどいと、食事も自身で行えず、家族に口に運んでもらわないといけなかったり。

その場合は1級の可能性が出てきます。

障害状態に該当するための「長期にわたって存在する」とは

さらに、時間的なキーワードも基準にあります。

障害の状態が「長期にわたって存在する」ことです。

ここでいう”長期”とはどの程度の時間を指しているのでしょうか?

障害年金は、初診日から1年6カ月経過しないと申請できないルールがあります。

つまり、初診から1年6カ月ずっと、症状が続いていた場合「長期にわたって存在する」として十分認められる可能性があります。

あとは1・2・3級の状態がどのくらい続いているのかで、認められる等級が異なります。

例えば、寝たきりの状態があっても、それが一時的で、ほとんどが家屋内なら活動できている状態でしたら、2級となる可能性が高いということになります。

ここで、

精神疾患の場合、症状に波があると聞きます。

治療が上手く行き、服薬しながらだけど、健常者と同じ仕事ができていた・・・初診から1年6カ月経過して、数カ月後、悪化して、仕事に制限を受ける状態になった。

この場合、仕事に制限を受ける状態がどのくらい続いているかで「障害状態」に該当するかの判断となります。

目安としては6カ月でしょうか。

これは、障害者手帳の申請が初診から6カ月経過で可能になっていることからです。

私のこれまでの経験ですと、6カ月経たずとも3~4カ月で認められているケースもあります。

病名や症状による状況でこの期間も人それぞれなので、判断は非常に難しいです。

ここだけの話、みんなのねんきんはこう相談に応じている

障害認定基準によれば、障害年金の対象となる精神疾患は、

  • うつ病
  • 気分変調症
  • 双極性障害(躁うつ病)
  • 統合失調症
  • ADHD
  • AS
  • 知的障害
  • てんかん

など多くの傷病名が対象とされています。

ただ、「適応障害」「パニック障害」「不安障害」は、障害年金の対象とされないと基準で定められています。

しかし、そのような病名でも弊社のノウハウを駆使して障害年金が認められたことがあります。

「障害状態」に該当する状況があり、その状態を証明できれば、障害年金が認められる可能性があるからです。

ですので、みんなのねんきんでは、障害年金の対象とならない病名の方でも、しっかりとお話を聞かせてもらうようにしています。

対象とされない病名であっても障害年金の可能性がないか、本人に寄り添う姿勢を大事にしているからです。

話を伺い、丁寧にカウンセリングしていくと、「障害状態」に該当する事実が確認できることがあります。

そのような場合、医師に確認すると病名が変わることもあります。

日常での過ごし方、家族の援助の様子、これまでの病歴、長い期間、症状から困っている状況が続いている・・・。

これまで、しっかりとヒアリングをしてカウンセリングすることで、障害年金に繋げたケースを多数経験しました。

私たち障害年金の専門家は、病名だけで「障害年金は無理」と安易に判断すべきではないと考えます。

ただし、症状が悪化して1~2週間などのように、期間が短い場合ですと、「障害年金がもらえるかどうか」の判断はできません。

「長期にわたって存在する」かどうか、初診から日が浅い状況では判断できないからです。

このような場合は今後の治療・症状の経過が重要。

今の症状に対応した治療や療養が継続できるよう、みんなのねんきんでは自立支援医療や健康保険の傷病手当金の紹介をしています。

今すぐ障害年金手続き代行に繋がらないからといって、カウンセリングを行わないということはしていません。

ここだけの話、今回のまとめです

今回は、障害認定日要件の「法令で定められた障害状態」について確認してみました。

ポイントは以下のとおり。

  • 制度それぞれで障害・障害者の定義が異なることを前提として理解しておく
  • 障害年金における”障害”は法令に定められた障害状態長期にわたって存在すること
  • 障害の状態は、1級でほぼ寝たきり状態2級で仕事ができず家屋内でしか過ごせない状態3級が仕事に制限がる状態が目安
  • 年金の対象とならない「適応障害」などの病名でも、みんなのねんきんは年金受給に結びつけた実績がある

病気になると、不安が大きくなります。

何か保障がないか・・・と障害年金に行きつく方が多いようです。

私自身も仕事中に指を失う障害が原因で、それまでの仕事ができなくなりました。

障害年金がなかったら・・・今と違った状況になっていたはず。

年金制度に対する不信・不安が指摘されていますが、障害年金という社会保障の支援がなければ私は社会復帰できなかったと思います。

だからこそ、社会保障の支援が必要な人に行き渡るよう、今後も障害年金の手続代行によって、社会に貢献し続けたいと考えています。

  • この記事を書いた人
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岡田真樹 みんなのねんきん社労士法人代表

大学卒業後メーカーに勤務。仕事中に左手を機械に巻き込まれ、親指以外を失う大ケガを負う。転職後、障害者雇用の枠で聴覚障害・発達障害・精神障害・身体障害を持つ方々と一緒に働いた経験を持つ。障害年金の手続きを自ら行なったことから年金制度に興味を持ち、社会保険労務士試験に合格。2020年よりみんなのねんきん社会保険労務士法人で実務の最高責任者を担い、2021年に代表就任。

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