「どうしたらできるかを考える」障害者ゴルフで再認識したたった1つのこと

【みんなのねんきん】岡田社労士

岡田真樹

みんなのねんきん社労士法人代表

ここだけの話、今回はこんな話です

2022年に引き続き、2023年も「日本障害者オープンゴルフ選手権」に参加しました。

さまざまな障害を持つメンバーがどのようにゴルフをプレーするのかお伝えします。

また、私自身2度めの参加を通じて感じるものがありました。

他の障害者との交流を通じて、障害者スポーツの現実をレポートいたします。

スポンサーリンク

ここだけの話、2023年のゴルフ選手権に参加しました

私は左手の親指以外を失う障害を持っています。

以前より障害者スポーツに興味があり、入会したのが「日本障害者ゴルフ協会」。

昨年(2022年)には「第27回日本障害者オープンゴルフ選手権」に参加しました。

前回の様子はこちら。

障害者ゴルフオープンに参加したらわかった障害者スポーツの舞台裏

岡田真樹みんなのねんきん社労士法人代表 Contents ここだけの話、今回はこんな話ですここだけの話、今回はゴルフ選手権についてですきっかけは「日本障害者ゴルフ協会」への入会ついに始まった!日本障害 ...

続きを見る

今年、2023年には「第28回日本障害者オープンゴルフ選手権」に参加しました。

大会前夜のオリエンテーションで他の障害者と交流する

海外選手や若い方が昨年より増えている

今回も大会前日のオリエンテーションから参加しました。

(タップで拡大)

この大会は日本人限定のものではありません。

海外からも参加があるのですが、今回は韓国、カナダ、オーストラリア、香港、台湾などと前回より増えていました。

海外参加者が増えている状況に関して、日本障害者ゴルフ協会の松田代表理事に伺いました。

「障害者ゴルフをパラリンピック競技に」するという大きな目的があり、そのため協会もアピールを強化していること、また、日本がアジアの中心であり、アジアで唯一の世界ランキング対象試合があることが参加者増加の理由とのこと。

また、今回参加には至らなかったですが、フィリピンやマレーシアからも問い合わせがあったそうです。

ゆくゆくは、アジア選手権を開催できたら・・・ともおっしゃっていました。

障害者スポーツをもっとメジャーにしたいという気持ちをヒシヒシと感じた次第。

会場では、英語、韓国語、中国語が飛び交っていました。

北関東の田舎出身の私は、そんな周囲の状況に硬くなってしまいました。

(タップで拡大)

年齢層はどうでしょう。

未成年の方を始め、若い方の参加が目立ったのも前回と異なる点です。

先天性の障害がある中学生とそのお父様に少し話を聞くこともできました。

初めての参加ですが、すごく前向きな様子で、「すごいな・・」と感心してしまいました。

未成年の選手は海外からも参加がありました。

2024年の春には、ジュニア育成の大会も計画されているようです。

合わせて今回は、コロナ禍が落ち着いたことも参加者が増えた原因でしょう。

参加にあたり、申込みが殺到し、申込みから1カ月あまりで定員に達したほど。

100人近くが参加する大きな大会となりました。

オリエンテーションでは、前回、一緒にプレーした方との再会もありました。

その中で驚いたことがあります。

前回、私と同じく初参加の方ですが、障害者ゴルフを行うにあたり、スポンサーがついたとのことです。

大会は、今回の選手権だけでなく、片マヒ選手権、中部障害者選手権などがあります。

遠方での大会参加が難しく、遠征費用のためにスポンサーをお願いしているとのことです(大会当日は、スポンサーロゴの入ったウェアを着ていました)。

前回、同じ初参加の立場でしたが、なんだか大きくなったなぁ・・・と感心してしまいました。

ちなみに、参加者と歓談する際には、障害年金について質問されることがあります。

実は障害年金の手続き代行をしていることを自己紹介で伝えていたからです。

障害年金の「更新」手続きについての質問だったのですが、既に障害年金を受け取っている方ならではの質問だと感じました。

日本で最上位の障害者ゴルファー小山田プロに話を聞けた

大会には、「プロ」の方も参加しています。

プロゴルフの資格は、「日本プロゴルフ協会(PGA)」で認定されます。

その、プロの方に話を聞けたのです。

世界障害者ゴルファーランキングで日本で最上位の障害者ゴルファーである小山田雅人プロ。

小山田プロは、右腕に障害があり、プレー中は義手をされています。

夏までヨーロッパの障害者ゴルフの大会を転戦していたそうです。

小山田プロとは障害年金の話もしました。

過去に役所で就労していたことがあり、その時、障害年金手続きの窓口担当だったそうです。

俄然、身近に感じてしまい、「明日のグランプリの部、応援しています」と伝えたのは言うまでもありません。

ちなみに小山田プロを紹介する記事はこちらです。↓↓

障害があることを言い訳にするのではなく、今、ゴルフができることに感謝しよう! 小山田 雅人 | ゴルフグローバル
障害があることを言い訳にするのではなく、今、ゴルフができることに感謝しよう! 小山田 雅人 | ゴルフグローバル

日本のゴルフ黎明期を支えた幻のゴルフ場、第7回は藤沢カントリークラブを紹介。わずか11年で閉場してしまった藤澤カントリー倶楽部は、現在、県立スポーツセンターとなっているが、旧クラブハウスだけは当時の趣 ...

続きを見る

いろいろな障害に合わせた参加部門が存在する

ところで、

障害と一口に言ってもさまざまですから、障害の種類によって参加できる部門が分かれています。

日本障害者オープンゴルフの参加部門は以下の通り。

  • グランプリの部
  • 車いすの部
  • 下肢障害の部
  • 上肢障害の部
  • 片マヒの部
  • 軽度障害の部
  • 重複障害の部
  • 知的障害の部

グランプリの部で参加するには、ハンディキャップが規定以下であることなどの条件があります。

私も当然、

岡田社労士
グランプリの部です!

と言いたいところですが、私のゴルフの腕前がそれを許しませんでした・・(汗)。(前回と表現が同じというツッコミはお断りします(汗))

私は、軽度障害の部で参加しました。

小山田プロからは日本プロゴルフ協会(PGA)が主催の障害者ゴルフの大会もあると教えてもらいました。

こちらは、

  • 上肢障害
  • 下肢障害
  • 上下肢障害
  • 内部障害
  • 視覚障害全盲
  • 視覚障害弱視
  • 聴覚障害

と部門が分かれています。

大会によって、部門が違うのだなぁ・・・と聞き流すところでした、が

岡田社労士
視覚障害全盲!? そもそもゴルフできるのか???どのようにプレーしているのか???

これは、詳しく聞かないといけません。

全盲とは、医学的には光も感じない状態をいいます。日常生活でも多くの援助が必要になる状態です。

実は全盲の方は介助者(ガイド)がついてプレーしているとのこと。

見えない状態ですので、ボールの所までガイドが連れていって打つというのです。

パターの傾斜は、自分の足の裏で感じている。とまでおっしゃっていました。

まるで座頭市・・・

機会があれば、その大会にも参加してみたいと感じました。

いよいよ競技スタート

障害者ゴルフは、基本的なルールは一般のゴルフと変わりませんが、特有のものがあります。

以下、大会・競技の模様をリポートするなかで解説していきます。

開会式・始球式

大会は2日間。今回も初日はスタート前に始球式が行われました。一部の方をご紹介します。

(タップで拡大)

こちらは、小山田プロ。

右肘下切断の障害があります。義手とは思えない打球でした。

(タップで拡大)

こちらはカナダの MacDermott Robert Allan 選手。

左手と左足が欠損した障害があります。

彼の動画を見ると驚きますので是非ご覧ください。

私が驚いた理由がわかると思います。

How golf guides Robert MacDermott through the up's and down's of life | Golf Channel - YouTube
How golf guides Robert MacDermott through the up's and down's of life | Golf Channel - YouTube

Robert MacDermott encountered a string of bad luck in the summer of 1987. First, he was electrocuted ...

続きを見る

障害者ゴルフ特有のルールとは

さて、

障害者ゴルフ特有のルールについて触れていきましょう。

最も違う点は、乗用カートのコースへの乗り入れがOKなことです。

ゴルフはボールを打ったら、落ちた所まで移動しないといけません。

コースは起伏があり、普通に歩いても大変です。

下肢障害や片マヒの場合、ボールの落ちた所までの移動が問題になります。

時間がかかると、全員のプレー終了が難しくなります。

プロゴルファーの試合では、コース内は、乗用カートでの移動はNG。

一般的なゴルフもカート道路以外を走ることは認められていません。芝生が傷むからです。

大会の会場となった新君津ベルグリーンゴルフクラブでは、コースのメンテナンスがしっかりしているため、乗用カートの乗り入れが可能とのこと。

これは、車いすゴルファーに対しても言えることです。

つまり、障害を持つゴルファーは、プレーできるコースが限られてしまうのが現状です。

ボランティアの同伴がある

前回に引き続き、一組に一人ボランティアが同伴してくれました。

ただし、今回は、参加者多数のため、すべての組に行き渡るボランティアが足りません。

幸い、私の組には、会場のゴルフコース職員の方がついてくれました。

初日、私は下肢障害(義足)、上肢障害と同じ組でプレーしました。

上肢障害の方は、前日のオリエンテーションで少し話をさせていただいた方でした。

下肢障害の方は、初めてお会いする方でしたが、とても気さくな方でした。

メンバーにも恵まれ大会が始まりました。

1番ホールからスタート

前回の天候は、冷たい雨。

今回は、絶好の天気でした。(これで私の成績が天気が悪かったことを理由とすることができなくなりました・・・)

スタート前には、競技委員の方から一組ごとに説明が行われます。

この説明が大会・競技であることを意識させてくれます。

緊張感が高まります。

(タップで拡大)

ここで、

ゴルフのプレースタートの方法ですが「ティーグラウンド」から始めます。

「ティーグランド」の位置が、通常はハンデキャップ(実力など)で違うのですが、障害者ゴルフの大会では、参加部門で区別されています。

(タップで拡大)

難易度に応じて距離が遠くなるのですが、目印(ティーマーク)の色で分けられています。

難易度が高い方から

ブルー → ホワイト → ゴールド → レッド

となります。

今回の大会では、

  • ブルー:グランプリの部
  • ホワイト:下肢障害、上肢障害、重複障害、軽度障害
  • ゴールド:片マヒの部、車いすの部、知的障害の部(男子)
  • レッド:女子

となります。

大会1日目は、全員がホワイトティーでプレー。

車いすの部に関しては、特有のルールがあります。

ボールが車いすの走行や停車ができない位置に止まってしまった時の対応です。

ゴルフコースには、池や川、バンカー(砂)などの障害物や起伏があります。

(タップで拡大)

プレー続行が難しい場合、救済エリアから罰なしで、プレーの続行ができるルールがあります。

車いすは、専用の仕様になっていますが、すべてをカバーできるわけではありません。

さて、大会1日目は、大きなケガもなく無事に終了しました。

私の成績は・・・残念ながら前回より悪いスコアでした。

ホテルに戻り、少し仕事をした後は、片マヒの方から夕食を誘われました。

片マヒでの日常を伺うと、スポーツ吹き矢やブルースハープ演奏も行っているとのこと。

大変前向きで、私も励みとなりました。

大会2日目

2日目は、下肢障害、片マヒ、ボランティアの方とのプレーになりました。

2日目も初めて会う方ばかりです。

私と下肢障害の方は、ホワイトティーで、片マヒの方は、ゴールドティーでのプレーです。

初日の挽回をしようと頑張りました。

が・・・前半の7ホール頃に非常時用で携帯していた電話が鳴ってしまいました。

プレー中だったので、非常に気まずい状況です。

そこから、ガタガタと崩れていってしまいました。

ゴルフは、メンタルのスポーツといいますが、身に染みて実感しました。

終了後、成績を確認すると、軽度障害の部では最下位でした。

岡田社労士
あの着信がなければ・・

そうです。もうおわかりですね。この結果は決して私の腕のせいではなかったのです(汗)。

一方、グランプリの部では、小山田プロが平成28年大会以来の優勝。

また、片マヒの部では、食事を一緒にした方も優勝されていました。

後日、タウン誌から取材を受けたと報告がありました。

障害者OPゴルフ 片マヒの部で櫻田さんV 連日自己ベストを更新 | 旭区 | タウンニュース
障害者OPゴルフ 片マヒの部で櫻田さんV 連日自己ベストを更新 | 旭区 | タウンニュース

区内若葉台在住で左半身にマヒを抱える櫻田新児さん(68)が、10月23・24日に開催された「第28回日本障害者オープンゴルフ選手権(主催/NPO法人日本障害者ゴルフ協会(DGA))の片マヒの部門で初優 ...

続きを見る

私の成績は、全くふるいませんでしたが、関わった方の成績が良かったので、気持ちよく大会を終えることができました。

ここだけの話、今回参加した感想です

今回は、障害者ゴルフ大会のレポートをお届けしました。

障害者ゴルフに参加して感じることは、参加者のみなさんが、すごく前向きなことです。

できないことよりもできることにスポットを当てる。

その中で創意工夫していく。

プレーには失敗がつきものです。

しかし、「上手く打てなかった・・・」「風がわからなかった・・・」など、失敗の理由は、自身の障害ではありません。

自身の障害があることを前提に、どのようにしたらいいか、と考えながらプレーしている方ばかりです。

私たちは、難しい物事に挑戦しようとするとき、最初に「できない理由」から考えてしまいます。

そうなると物事が進みません。

障害者ゴルフを通じて、できない理由よりも、「どのようにしたらできるようになるか」の姿勢が大切だと感じました。

私が障害を負ったばかりの頃は、周囲の目や偏見を気にしていました。

指を失った左手を、できないことの理由にして、何も進まなかった時期がありました。

しかし、今はできることを頑張ろうと、現在に至っています。

今回、障害者ゴルフの大会に参加して、大切なことを再確認できました。

次回は、福岡県で開催予定とのことです。

遠方ですが機会があれば是非参加しようと思います。

  • この記事を書いた人
アバター画像

岡田真樹 みんなのねんきん社労士法人代表

大学卒業後メーカーに勤務。仕事中に左手を機械に巻き込まれ、親指以外を失う大ケガを負う。転職後、障害者雇用の枠で聴覚障害・発達障害・精神障害・身体障害を持つ方々と一緒に働いた経験を持つ。障害年金の手続きを自ら行なったことから年金制度に興味を持ち、社会保険労務士試験に合格。2020年よりみんなのねんきん社会保険労務士法人で実務の最高責任者を担い、2021年に代表就任。