今回のコラムは年金実務者向けの内容です。
ここだけの話、今回はこんな話です
障害年金の相談をできるところが増えてきました。
当社でも月に100件ほど相談がありますが精神疾患に関する相談がほとんど。
困っていること、辛いことを話していただくのですが、聞いていて心を痛めてしまうのが、病気に対して周囲の理解がないことです。
精神疾患は、外見からわからないため、病気の知識がないと、根性論で済まされてしまいます。
特に、家族が病気への理解がなく、辛くても、通院さえさせてもらえないとの相談には、こちらも辛くなります。
相談が多いことにコロナ禍の影響が大きいのかもしれません。悲しいニュースや注意喚起が逆に不安をあおっているように思われます。ストレスを感じやすい環境になっていると感じます。
今回は、うつ症状などで辛い思いをしているのに周囲の理解がないため、通院できない相談について書いてみたいと思います。
ここだけの話、こんな症状・こんな事例です
なぜ、通院できない?
経済的理由で通院をためらう方もいますが、最も多い理由として、家族が本人の通院を認めないことが挙げられます。
うつ病などの症状には、病気を自分のせいと思い、周囲に打ち明けず、一人で抱え込んでしまい、通院せず我慢してしまう場合もありました。
インターネットの普及で、「自分は病気なのかもしれない…」と調べることができるようになり、自分の症状と合致していると、さらに、不安感が増してしまいます。
はっきりさせたいため、病院で診断を受けようと家族に相談しても、理解してもらえず通院させてもらえない、とのケースが多いです。
インターネットからの情報だけということもご家族からすれば、理解しにくい(認めにくい)状況なのかもしれません。
発病の背景についてもお互いの理解が難しいようです。世代によって置かれてきた環境が違うことも原因です。
一昔前では、我慢できる・我慢するものと思っていたものが、現在では、おかしいものだったりします。
ご家族からは、「そんなことぐらいで」と思うことかもしれません。
現在では、「そんなこと」が大きな要因となっていることが、理解できないのです。
自分なら病気にならないと決めつけてしまっているようです。まるで、家族の間に見えない壁が存在しています。
うつ病の前兆の状態は、以下のようになります。
① 楽しみや喜びを感じない
通常なら楽しかったようなことでも、楽しみや喜びを感じない。
② 何か良いことが起きても気分が晴れない
きっかけとなった出来事や要因が解決したり、自分にとって良いことが起こったりしても、気分が晴れない。
③ 趣味や好きなことが楽しめない
趣味や好きなことを行っても、楽しめず暗い気分が晴れない。
(出典:こころの耳 働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト 厚生労働省 筆者による要約)
上記のようなことは、辛い時や悲しい時に誰にでもおこることです。
誰でも経験するので、このような状態であることを伝えられても病気の前兆と思わないのかもしれません。
しかし、上記のような状態が2週間以上続く場合、うつ病と診断されることになります。
また、精神疾患に対する偏見や世間体のため、精神科への受診が恥ずかしいと思っている方がいるようです。
これは、地域にも差があります。噂になることをご家族が嫌がってしまうこともあるようです。
通院できないと、どうなるか
当然のことながら病状は改善せず → 悪化してしまう
治療を受けることができませんので、病状は改善しません。
病気かどうか確証もなく、不安感をますます大きくしてしまう場合もあります。
うつ病の治療においては、周囲の人の協力が必要とされています。
協力がなければ病状は改善せず、悪化してしまいます。
病気の証明ができず → 社会保障制度から保障を受けられない
国の制度には、病気やケガで受けることができる保障がいくつかあります。
しかし、医師の診断がないと、病気の証明ができず、保障を受ける手続きが進められません。
そのため、国民が当然受けられる経済的な保障を受けることができません。
結果的に・・
病気の改善もなく、経済的な保障も受けられず、何も解決しない。状況は悪くなるばかり。
コロナ禍もあり、社会が不安定でストレスを感じやすくなっています。
精神疾患の中でも「うつ病」は、環境次第で、誰でもかかってしまう可能性がある病気であることを周囲を含めてしっかり理解しなくてはなりません。
実務担当者が相談を受けるうえで注意したいこと
第三者からの進言が有効
障害年金相談では、「通院できていない」との相談は、初診日の確認ができなかったり、病名がわからなかったりで、対応に困ってしまうかもしれません。
しかし、相談される方は、藁をもつかむ思いで相談してきます。
話を聞くことだけも、相談される方にとっては、助かる場合もあります。
ただし、曖昧な知識や回答をすることは、しないように心がける必要があります。
医師ではないのに、診断することや病名をつけることは絶対してはいけません。
誤った知識により、相談者を混乱させてしまい、かえって病状を悪化させる恐れがあります。
家族の理解がなく、通院ができていないことに対して、相談者本人以外の方からご家族に進言してもらうことを勧めています。
医療関係者や福祉の方など、第三者が受診・通院の必要性をご家族に説明することで、理解につながるようになります。
そのため、そのような第三者がどこにいらっしゃるかの情報を探します。
周知活動も必要
また、医療機関を受診してもらうことで、病状によりますが、障害年金などの保障が受けることが可能になるかもしれません。
将来について不安を持っている方には、通院することで受けられる保障の内容が光になることもあります。
精神疾患への理解を深めてもらうために、周知活動も重要です。
精神科医師の方々もインターネットなどで精神疾患への理解を伝えています。
わたしたち社労士も精神疾患で受けられる制度を周知し、社会への不安を少しでも和らげられるように努力すべきと思います。
ここだけの話、今回のまとめです
今回は、障害年金相談で多い「通院できない」との相談について書いてみました。
ポイントは以下のとおり。
- 家族の理解がないため、通院を認めてくれない場合がある
- 医師の診断がないと、国民が当然受けられる社会保障が受けられない
- 相談を受けるうえでは、話を聞くだけでも助けになる
- 第三者から通院の必要性を家族に進言してもらう
- 精神疾患・社会保障制度に対する周知を広める必要がある
相談者の病状から年金請求の手続きが進められないことを聞きます。
日常生活が難しい状況から、障害年金を勧めても、通院していないために申請ができない・・・
申請ができないからと相談を終わりにしていいものでしょうか?
家族の理解を得ることは、簡単ではありませんが、事態が前に進むような傾聴の姿勢が大事です。
これからも必要な制度が必要な方に行き渡るよう、自身ができることを考えていくつもりです。
岡田真樹
みんなのねんきん社労士法人代表