ここだけの話、今回はこんな話です
ゴールデンウィークが終わったタイミングで体調不良となる「五月病」。
最近は、五月病だけでなく、新年度開始時に「四月病」、4月・5月をなんとか乗り切ったら「六月病」・・・常にストレスにさらされているようです。
そのストレスがうつ病などの精神疾患に進んでしまう前に、なんらかの手を打つ必要があります。
そこで今回も前編に続き、ストレスに対してみんなのねんきん社労士法人代表の私自身がどのような対処を行っているか「みんなのねんきん(みんねん)流 ストレスレジリエンス」についてお話しします。
今回の後編はSOC(Sense of Coherence センスオブコヒーレンス、以下「SOC」)について。
是非前編から確認してください。
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ストレスが精神疾患につながらないために!みんなのねんきんが考えるストレス対処法とは 前編
ここだけの話、今回はこんな話です 4月となりました。 新しい年度が始まるタイミングなどの環境の変化は、ストレスの原因となることがあります。 そのストレスがうつ病などの精神疾患に進んでしまう前に、なんら ...
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ここだけの話、こんな症状・こんな事例です
前編では、みんねん流 ストレスレジリエンスでは、具体的に2つの考え方で行っていることをお伝えしました。
- マズローの欲求階層説
- SOC(Sense of Coherence センスオブコヒーレンス:「首尾一貫感覚」「ストレス対処力」)
マズローの欲求階層説は、ストレス感じている状態への対処療法として考えています。
つまり、ストレスを感じた事後の考え方。
今回お話するSOCは、ストレスに耐性をつける考え方です。
つまり、ストレスを予防する事前の考え方。
ストレスを自覚してしまったら、マズローの欲求階層説で対処してますが、同じ状況・環境で、何度もストレスを受けていると、仕事が進まなくなってしまいます。
ストレスの自覚を少なくするにはどうしたら良いか・・・そこで登場するのがSOCの考え方です。
ここだけの話、SOCとは
なぜ同じ過酷な状況なのに精神的な健康を維持できたのか?
SOCは、イスラエルの心理学者アーロン・アントノフスキー博士により提唱された概念です。
第二次世界大戦下の強制収容所に収容されていた女性たちを研究対象として確立されたとのこと。
強制収容所は現代の我々が想像もつかないほど、過酷な環境だったはず。
解放された後も、収容されていた方の約7割が精神疾患に罹患されていたとのことです。
医学分野では、病気になる人はどのような特性があるか、この場合精神疾患を発症した7割の方を研究対象とすることが普通。
ところが、アントノフスキー博士は、精神疾患に罹患しなかった残りの3割に注目しました。
なぜ、同じ過酷な状況なのに精神的な健康を維持できた一定層がいるのか?
そして、その研究の中で、生まれたのがSOCなんだそうです。
SOC = Sense of Coherence を直訳すると、
<「首尾一貫している(Coherence)」という感覚(Sense)を持っていること>
となります。
“首尾一貫している”がわかりにくいですが、「納得感」「腹落ち感」「腑に落ちる感」のように言い換えている研究者もいます。
私も「納得感」の方が感覚的に近いと感じます。
3つの要素から構成されるSOC
SOCは、3つの要素から構成されています。
- 把握可能感(Sense of Comprehensibility)
- 処理可能感(Sense of Manageability)
- 有意味感(Meaningfulness)
一つ一つ見ていきましょう。
① 把握可能感(Sense of Comprehensibility)
これは、自分の置かれている状況や少し未来の展開を「把握できる」と感じることです。
身の回りで起こることは、おおよそ想定の範囲内であり、想定外のことが起きてもそれを把握することができる感覚をいいます。
起こりうることの全てを把握するのではなく、「おおよそ把握できてきている」感覚を持てるかになります。
人は、知らないもの・わからないものに恐怖を抱きます。
知らないものなどに、自分なりに想定の範囲内と「把握できる」となればストレスを感じにくくなります。
② 処理可能感(Sense of Manageability)
これは、自分に起きる事象に対して「なんとかなる」と感じることです。
自分に降りかかるトラブルに対し、悲観的にならず、相談者など周囲を巻き込みながら処理することができる感覚をいいます。
トラブルや課題に対しても、「なんとか乗り切れる」感覚をもてるかになります。
過去のトラブルなどを引きずっているよりも、自分だけでは限界があると割り切り、周囲を巻き込みながら進めていくことがストレスの軽減につながります。
③有意味感(Meaningfulness)
これは、自分に起きる全ての事象に対し「意味がある」と感じることです。
トラブルや苦労、努力も自分にとっては、生きる意味を見出すためやりがいための意味があることと感じることができる感覚をいいます。
どんなことでも自分にとって「意味がある」感覚をもてるかになります。
被災地へのボランティアなど、他人のための行動では、失敗したとしても、その感覚が強く持てると思います。
反して、自分に都合よく考えて利己的に行動していると、失敗が大きなストレスとなります。
SOCが意味するもの
SOCの概念を理解できると「ストレス耐性」が強くなります。
そして、ストレス耐性が強くなると、精神的な健康を保つことになります。
したがって、ストレスに強くなるためにはSOCの3つの感覚を強めていくことが必要になります。
3つの感覚は、それぞれ独立したものではなく、繋がっています。
「把握できている」と感じることは、把握できていると感じている範囲で「なんとかなる」とつながります。
「意味がある」と感じることは、そこから生まれる想像力が「なんとかなる」と感じるための具体的手段につながります。
ここだけの話、みんねん流ストレス対処法とは
このSOCを私自身でどのように解釈して活用しているか。
SOCの感覚を強めていければ、ストレス耐性が強まります。
この感覚を強くするためには過去の経験の積み重ねが重要と解説されているものもありましたが、それだけでは具体性に欠けます。
そこで、みんなのねんきん流の解釈はこうです。
「主人公になる」です。
みんねん流の主人公は、全てがハッピーエンドに向けて進む物語です。
自分自身が人生の物語における主人公。
起きている事象を「把握できている」
トラブルがあっても「なんとかなる」
逆境には「意味がある」
これを私自身に当てはめてみましょう。
私は過去、仕事中の事故で親指以外を失う大ケガをしました。
失ったのは4本の指だけで命に別状はない →「把握できている」
親指はまだ残っている →「なんとかなる」
この事故に遭遇したことに人生の → 「意味がある」
この3つの感覚を持ち、大ケガに打ち勝つ主人公になりました。
そして、
現在は、障害年金専門家という物語の主人公です。
大ケガしたことが障害年金に出会うキッカケだったので、やはり事故には意味があったわけです。
今の仕事に当てはめてみると、
相談者が障害年金の手続きで何に困っているのか →「把握できている」
年金受給をする上で越えなければいけない、問題解決の糸口があるはず →「なんとかなる」
多くの専門家がいる中で私自身を見つけてもらい、私自身が手続き代行することに → 「意味がある」
こんなふうに考えて仕事に取り組んでいます。
スポ根マンガの主人公は、特にSOCの感覚が強いと感じます。
例えば、巨人の星の星飛雄馬(古くてすみません。昭和の人間なもので・・)。
甲子園で活躍しても、ボールが軽くプロ野球で通用しない →「把握できている」
大リーグボール1号を考える →「なんとかなる」
大リーグボール1号を攻略されても、2号を考える →「把握できている」「なんとかなる」
2号を攻略されても3号を考える →「把握できている」「なんとかなる」
3号では、左ひじを壊す恐れがある →「意味がある」
左ひじがこわれたらバッターで復活 →「把握できている」「なんとかなる」「意味がある」
右投手で復活・・・
困難に見舞われるたびに、乗り越えていく状況には、しっかりSOCがあります。
マンガにも生きるためのヒントがあるわけです。
ここだけの話、今回のまとめです
今回も前回に続き、私が行っている「みんねん流ストレスレジリエンス」をお話しました。
前編でご紹介した「マズローの欲求階層説」は、ストレス状態となった時に悪化しないよう、事後に対処する方法でした。
後編でご紹介した「SOC」はストレス耐性を高めていき、ストレス状態になりにくくする予防策となる考え方です。
ポイントは以下のとおり。
- SOCは、同じ境遇でも精神的に健康な人がいることから生まれた概念
- ストレス耐性が高い人達は、SOCを持っている
- SOCは、3つの感覚「把握できている」「なんとかなる」「意味がある」から構成されている
- みんねん流ストレスレジリエンスとは「主人公になる」こと
以上2回にわたり、私のストレス対処方法・予防方法をご紹介しました。
みんねん流のストレスレジリエンスが読者のみなさんにとって参考になれば幸いです。
私も障害年金専門家の物語の主人公として、これからもストレス耐性を高めて、さまざまな相談に応じていきます。
岡田真樹
みんなのねんきん社労士法人代表