ここだけの話、今回はこんな話です
みんなのねんきんの障害年金の相談の現場では、病気の発症原因の聴き取りを行っています。
実は障害年金を受給するにあたり、発症の原因は問われないのですが、弊社は手続き代行をするうえで、原因の聴き取りを重要視しています。
今までの聴き取りの経験から、どのような原因で精神疾患の発症に至ったのか。
今回は、障害年金の手続の中で確認できた、発症の原因と私の想いをまとめてみました。
ここだけの話、発症の原因を共有して寄り添います
みんなのねんきん社会保険労務士法人では、毎日多くの方の障害年金の相談に応じています。
障害の原因のほとんどがうつ病、統合失調症、双極性障害などの精神疾患です。
精神疾患の発症原因は、ひとりひとり様々。
発症の原因は、障害年金を受給するうえで関係あるのでしょうか?
例えば、労災保険(労働者災害補償保険)では、病気や怪我の原因が問われます。
業務に起因するものや通勤途上の災害でなければ対象になりません。
一方で、国民年金・厚生年金保険制度から支給される障害年金は、労災保険と異なり、病気や怪我の原因は、限定されていません。
以下の障害年金の3要件を満たしさえすれば、発症の原因は問われないのです。
障害年金受け取りのための3要件
- 初診日要件:障害の原因となった傷病について初めて医者に掛かった日(初診日)に国民年金または厚生年金保険に加入していること
- 保険料納付要件:初診日の前日時点で、年金保険料の未納が少ないこと
- 障害認定日要件:障害認定日(初診日から1年6カ月経った日)に法律で定められた障害状態であること
そのため、病気や怪我の原因よりも、障害状態の重さが重要とも言えます。
しかし、弊社では、どのようにして発症したのか、受診するきっかけは何だったのか、本人にヒアリング(聴き取り)することを重要視しています。
聴き取りを行うと、様々なことを理由に、精神疾患を発症していることがわかります。
なぜ、発症の原因が問われないのに、敢えて聴き取りを行うのか。
2つ理由があります。
一番の理由は発症の原因を共有することで本人に寄り添えると考えるためです。
聴き取りを行うことで、私自身の気持ちが大きく揺さぶられることがあります。
本人の痛み・苦しみを知ろうと努力することで、本人の気持ちになって手続きを遂行することができます。
2番目の理由は、医師への情報提供のためです。
年金請求の書類一式には医師の診断書が必要です。
障害状態を証明する診断書が障害年金受給を左右すると言っても過言ではありません。
そのため、弊社では発症の原因を含めて、医師への情報提供を行っています。
医師が診断書を作成するにあたり、発症のきっかけや受診に至った経緯も重要だからです。
そこで、弊社の聴き取りの情報を医師に伝え、診断書作成の一助にしていただいているのです。
ここだけの話、精神疾患発症の原因はストレス
さて、
ここからは、これまで私が発症原因を聴き取りしてきたなかで、よく耳にしたものをご紹介していきましょう。
まず、
発症の原因は一言で言えば、「ストレス」です。
生物にストレスを与える何らかの刺激のことをストレッサー(stressor)といいます(「Wikipedia」より)。
このストレッサーは、私が聴き取りをしたうえで、「なるほど」と理解できるケースもあれば、「え?そうなの?」という意外なものもあります。
主なものを以下にあげていきましょう。
1.職場での人間関係
最も多いのが、これです。
特に上司との関係から発症されたケースが多いです。
部下への依頼の仕方や指導の仕方が高圧的と感じ、会社に行くことも困難、発症と至っています。
また、
社内において、周囲から孤立する疎外感もストレッサーとなっています。
2.家族との人間関係
家族との人間関係がストレッサーとなっているケースもあります。
両親、配偶者がストレッサーとなるのです。
例えば、両親から過度な期待を受けてきたとか、配偶者からの理解が得られないというものです。
そのような状況が継続し、誰にも相談できずに感じてきた孤独感がストレスに結びつきます。
3.仕事の量・重圧
仕事がストレッサーになるケース。
長時間労働や無理なノルマなどが原因となっています。
これらをこなしたことが評価につながればまだ良いのですが、多くは一方的に追い込まれる報われそうもないもの。
それがストレスにつながります。
このような職場環境ですと、社員同士の人間関係が悪いこともあります。
これらが合わさってストレッサーとなるのです。
4.環境の変化
進学・転居・結婚などの環境の変化がストレッサーとなることもあります。
仕事で昇進したことがストレッサーとなってしまった方もいました。
昇進すると給与も増えるのですが、それよりも環境の変化での対応が難しかったとのことです。
昇進については、私は意外だなと感じました。
また、新学期や新年度を迎えた場合も環境が変化します。
新年度から少し経過した5月や夏休み明けの9月に体調を崩すことはよく聞きます。
新しい時期を迎えれば仕事内容も人間関係も変わるため、それらがストレッサーとなるのです。
5.重大な出来事
ご家族や友人など親しい人の死やペットの死、離婚など、大きなショックを受ける出来事がストレッサーとなり得ます。
ショックが大きいために、長く気持ちの落ち込みが続き、発症の原因となっています。
すごく良くしてくれていた方、力になってくれていた方との死別には、特に大変なショックを受けることがあります。
無気力となり、「何もする気がおきない」という相談時の言葉が記憶に残っています。
6.精神疾患以外の怪我・病気
大きい怪我や大病を罹患したことがストレッサーとなり、長期間気持ちが落ち込み発症するケース。
私自身も怪我からPTSDを発症したことがあります。
発達障害や知的障害の方が、社会との壁を感じ、うつ病も併発してしまうケースもあります。
例えば、発達障害の方のご相談でこんなことを伺いました。
他の人が簡単にできていることが難しい
感覚過敏でその場にいることが難しい
あいまいな表現がわからない
空気を読んだ行動がむずかしい
など。
周囲からの理解が得られないことで、社会との壁を感じることになるのです。
ここだけの話、発症の原因からみんなのねんきんが思うこと
発症の原因を依頼者から聴き取りすると、その人の半生を辿った気分になります。
大変な苦労、辛い思いをされてきたことに共感し、何としても障害年金の受給に繋げていこうというモチベーションにつながります。
一方で、ストレッサーとなるものについて思うこともあります。
周囲の人間がストレッサーとなることについて
ストレッサーとして挙げた1(職場の人間関係)と2(家族との人間関係)は、周囲の人間によるものです。
聴き取りを行っていると、いつも悩みます。
ウィルスが原因で風邪などの病気になってしまうことと、周囲の人間が原因で精神疾患となってしまうこと、これらをどのようにとらえるべきか。
ウィルスが原因であれば、マスクをするなど予防の対策を立てられます。
しかし、周囲の人間が原因となると、対策は簡単なことではありません。
しかも、周囲の人間関係なしに社会生活を送ることはできないところが厄介なところ。
また、自分自身がストレッサーとなって誰かのストレスの原因となることだってあるのです。
パワハラやモラハラなどが話題になることも増えてきました。
人間自身がストレッサーとなってしまい、その結果、精神疾患の発症に至ってしまう・・・。
これを防ぐにはどうしたら良いか。
答えが出ないまま、今も相談の現場で悩み続けています。
発達障害や知的障害の方がうつ病も併発することについて
発達障害や知的障害は幼少期に発症しているケースがほとんどです。
その方がうつ病を併発している原因は、先に述べたように社会との壁が原因となっています。
学校では、問題なく過ごせていたのが、社会に出た際に壁を感じ、うつ病を発症。
周囲が発達障害・知的障害について、理解が足りないためではないかと思います。
厚生労働省は、「精神・発達障害者 しごとサポーター」で企業に対し、理解を深める活動をしています。
ハローワークに出前講座を依頼することも可能ですが、eラーニング版もあります。
-
精神・発達障害者しごとサポーター養成講座
精神・発達障害についての正しい知識と理解を持って、温かく見守り、支援する応援者となっていただけるよう、精神・発達障害のある方と共に働く上での基本的なポイントについて学ぶことができます。
www.mhlw.go.jp
このeラーニングサイトを覗いてみると、「発達障害がある同僚と仕事においてどう接すべきか」ということが具体的に学べます。
参考になると思うので読者の方も是非ご覧になってください。
これらを通じて、発達障害・知的障害の方が感じる社会の壁が低くなればと思います。
ここだけの話、今回のまとめです
今回はみんなのねんきんの相談経験から精神疾患を発症したストレスの原因となるストレッサーについてまとめました。
ポイントは以下のとおり。
- 障害年金の受給において発症の原因は問われないがその原因を聴き取って適切な手続代行に活かしている
- 代表的なストレッサー6つを紹介 多くは職場や家庭での人間関係
- 発達障害・知的障害者がうつ病を発症しないために周囲の理解が欠かせない
年金で障害者に寄り添い、年金で社会に貢献する
これはみんなのねんきん社会保険労務士法人のビジョンです。
ビジョンとは
年金をもっと身近にもっとわかりやすく
というみんなのねんきんグループの理念を実現するための、当社労士法人の具体的な方向性を示したものです。
このビジョンに照らして、発症のきっかけ、原因については、しっかり確認することが重要と私は思います。
聴き取りは、その方の半生を辿ることですから、私も覚悟をもって聴いています。
今までの経験をもとに、このようなコラムを通じて、精神疾患についての理解を深めてもらえたらと感じます。
岡田真樹
みんなのねんきん社労士法人代表