ここだけの話、今回はこんな話です
障害年金の申請手続きをするうえで、必ず必要なもの。
それは、医師の診断書です。
この診断書、当然のことながら”いつ時点で診断されたものか”が重要。
ざっくり言うと、直近3ヶ月以内の症状で作成された診断書が必要です。
とすれば、それより古い診断書では障害年金を受け取れません。
ところが・・・、弊社がお手伝いした案件で、4ヶ月前の症状を元に作成された診断書で年金が決定されたのです。
今回は、みんなのねんきん社会保険労務士法人で手続き支援した、ちょっと変わった実例をご紹介します。
ここだけの話、こんな症状・こんな事例です
弊社への相談までの経緯
精神疾患に悩むAさん。
弊社で相談を受けた際には、Aさんの症状は思わしくなく、会社を休職されていました。
既に退職も決まっているとのこと。
実は、10年以上前に発症され、治療を受けながら就労をしていたとのことです。
最近になって就労先の人間関係が原因で症状が悪化し、働くことが難しい状態になってしまいました。
Aさんのお住まいは、会社の寮だったのですが、退職を機に実家に戻る予定でした。
実家に戻られた後の通院先は、決まっていません。
ここで問題が生じます。
医療機関を変えて、すぐに障害年金用の診断書を作成できるか・・・これは、うつ病などの精神疾患の場合、難しいことが多いです。
というのも、
肢体の機能の障害と違い、内部障害では、症状を把握するために、ある程度の診察期間を要するからです。
医師の方針などにもよりますが、これまでの経験上、転院後すぐに障害年金用の診断書の作成は難しいとなるケースが多いです。
つまり、
実家に戻り、医療機関を変えて、そこで診断書を作成するとなると、申請までに数か月を要することになります。
これではAさんの期待に応えられません。
そこで、請求に必要な診断書は、転居前の医療機関に依頼することにしました。
障害年金の請求方法は大きく2種類ある
ここで、障害年金の申請方法について解説しておきましょう。
申請方法には、大きく2種類があります。
現在の病気やケガの状態を証明する日によって、障害認定日による請求(以下、「認定日請求」といいます)、そして事後重症請求とに分けられます。
前者の認定日請求とは、障害認定日に法令で定める障害状態であるときに請求します。
この請求により、障害年金が認められると、障害認定日の翌月分から障害年金が支給されます。
障害認定日とは
初めて医師の診断を受けた日から1年6カ月を経過した日、または1年6カ月以内にその病気やけがの症状が固定した場合はその日
一方、事後重症請求とは、障害認定日に法令で定める障害状態に該当しなかった場合に行います。
その後、悪化し法令で定める障害状態に該当したら請求します。
事後に重症化したための請求方法なので、”事後重症請求”と呼ばれるのです。
この請求により、障害年金が認められると、申請した翌月分から障害年金が支給されます。
両者の違いは過去に遡れるかどうかという点です。
例えば、2022年7月15日に年金請求書を提出し、同日付けで年金事務所が受け付け、後日年金が決定したとします。
認定日請求をした場合、例えば、障害認定日が2019年3月15日であれば、2019年の4月分まで遡って年金を受け取れます。
事後重症請求の場合は、過去に遡ることはなく、2022年8月分からの年金を受取ります。
障害年金のご相談を受けていると、事後重症請求について、誤解されがちです。
というのも、
「事後重症」という名称から、症状が悪くなった時点から障害年金が支給されるとの誤解です。
あくまで支給されるのは、年金請求手続きを行った翌月分からになります。
そして、
それぞれの請求には、障害状態を証明する資料として、医師の診断書を提出します。
どちらの請求方法についても、「いつ障害状態に該当しているか」は、診断書の「現症日」で確認されます。
現症日とは
診断書で証明している状態が「いつの時点のものか」を示している日
認定日請求では、原則として「障害認定日より3カ月以内の現症日」の診断書が必要です。
一方、事後重症請求では「請求日前3カ月以内の現症日」の診断書が必要になります。
Aさんの場合、認定日請求は困難だったため、事後重症請求で障害年金を受け取れるよう代行しました。
診断書は入手できたが問題発生!
診断書を依頼する前に、初めて医師の診断を受けた医療機関が、現在とは別の医療機関である場合、その最初の医療機関からの受診証明を取得します。
Aさんが初めて医師の診断を受けた医療機関には、10年以上前の記録がしっかり保管してありました。
しかし、紙のカルテだったため、探すのに時間がかかり、結局、この証明書を入手するのに、6週間もかかってしまったのです。
この時点でAさんが転居してから既に1カ月半経過。
そして、
転居前の医療機関に診断書を依頼した時には、最終受診日から2カ月近く経っていました。
また、
診断書はすぐに書いてもらえるものではありません。
忙しい医師の業務の合間をぬって作成してもらうものなので、1〜2ヶ月かかってしまうものです。
このような経緯があり、診断書は出来上がったものの、現症日は、4カ月前の日付だったのです。
このまま、障害年金を請求しても、受付してもらえません。
さて、どうすべきか・・・。
ここだけの話、みんなのねんきんではこう対応した
社労士意見を添えることで突破を試みる
悩んだすえ、年金請求書を提出する際、社労士意見として「上申書」を添付することとしました。
「3ヶ月以内の現症日」というルールが守れなかった正当な理由を正直に伝えることが大事だと思ったからです。
上申書では以下の状況を説明しました。
- 転居後、以前の医療機関への受診が難しい
- 転居後も新たな医療機関で治療を再開している
-
転院後の医療機関で診断書を作成する場合は相当な期間がかかる
特に、重要なのは、診断書の現症日から請求日までの4ヶ月間、障害状態が継続していることを説明できるかになります。
この間に障害状態が変化しているとなると、審査時に提出した診断書では、「判断できない」と却下される可能性があるからです。
そのため、
-
前の医療機関の最後の受診以降は、会社の寮での単独生活ができなくなったため、実家に戻っている
- 実家では、症状が重いため、日常生活の様々な場面で家族の援助が行われていた
と説明することで、現症日以降も障害状態が継続していることを訴えました。
差し戻し覚悟で請求書を提出すると・・・
このような事情があったため、上申書を添付したものの、「診断書を取直しせよ!」との年金事務所からの差し戻し(返戻)を覚悟していました。
ところが!
年金事務所からの弊社への問い合わせも、差し戻しも無く、すんなり、障害年金が決定されました。
しかも、通常の年金請求と同じくらいの期間(おおよそ3から4ヶ月)での決定だったのです。
このように、審査する側が納得できる理由があり、その状況を説明できれば、イレギュラーなケースでも年金受給につながることがあるのです。
ここだけの話、今回のまとめです
今回は、障害年金請求に必要な診断書の現症日について、イレギュラーなケースをみんなのねんきんでどう対応したかご紹介しました。
実は診断書の現症日の縛りは、専門的に解説すると、法律・政令・省令にルールとして明記されていません。
厚生労働省の通知や通達によるものなんです。
つまり、一般国民に周知されているものではなく、厚生労働省および日本年金機構内部職員向けの統一的な運用ルールなわけです。
(既に2級の障害年金を受け取っていて、1級にしてもらいたいという「年金額改定請求」については、診断書の現症日について厚生労働省令に明記されています)
そのため、今回のようなイレギュラーなものでも、運用の中で柔軟に対応していただけました。
仮に、
法律で「請求日前3カ月以内の現症日」の診断書の提出を要すると定まっていたら、今回の方法では対応できませんでした。
今回のポイントは以下のとおり。
-
障害年金請求に提出する診断書には現症日に関するルールがある
-
事後重症請求をする場合は、「請求日前3カ月以内の現症日」の診断書が必要
- イレギュラーなケースでも諦めずに対応する専門家に手続代行を依頼すべし
障害年金の審査は、提出する書類のみによって行われます。
書類の中には、診断書のように有効期限があります。
多くの書類が必要になるのですが、有効期限を考慮して、手続きを進めないといけません。
手続きの進め方次第では、せっかく、書類が揃えることができても、受け付けてもらうことができないことになってしまいます。
みんなのねんきん社労士法人では、そのようなリスクがないよう、障害年金手続きを進めています。
また、今回の事例のような場合でも、対処する方法を追究していく姿勢で行ってまいります。
諦めない姿勢が今回の奇跡につながったと感じています。
岡田真樹
みんなのねんきん社労士法人代表