他で「無理」と言われた障害年金を”みんなのねんきん”が受給に結びつけた舞台裏 その2

【みんなのねんきん】岡田社労士

岡田真樹

みんなのねんきん社労士法人代表

ここだけの話、今回はこんな話です

トラ
他で相談したら「障害年金の受給は無理」と言われたのですが・・・

このような相談が寄せられた場合、当社では

無理と言われた原因はなにか?

受給に結びつく可能性はないか?

こんなことを探りながら、詳しくお話を伺うようにしています。

そして、他社で無理と言われた案件でも年金に結びつけた事例があり、別のコラムで同様の相談事例をご紹介したことがあります。

他で「無理」と言われた障害年金を”みんなのねんきん”が受給に結びつけた舞台裏 その1

岡田真樹みんなのねんきん社労士法人代表 Contents ここだけの話、今回はこんな話ですここだけの話、こんな症状・こんな事例です「障害年金は無理」と言われた真相とは・・ここだけの話、何が問題なのかこ ...

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今回のコラム、他で断られたものの、当社で手続きを代行した結果、無事に受給が認められた事案をご紹介します。

どのような背景事情があったのでしょうか。

詳しく見ていきましょう。

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ここだけの話、こんな症状・こんな事例です

統合失調症」に悩むAさん。

統合失調症は、障害年金の認定基準に該当する病気。

すなわち、障害年金受給の可能性があります。

そこでまず、

病歴を確認すると、20年前から同じ病院に継続して通院しているとのこと。

しかし、

20年前に初めて医師の診断を受けた際には、保険料の未納があったのです。

ここで、障害年金を受け取るための3つの要件の1つに「保険料納付要件」があります。

保険料納付要件とは

初めて医師の診断を受けたタイミングで直近1年間に未納期間が無いこと、または、これまでの年金加入歴における未納期間が全体の3分の1未満であるという障害年金をもらうための要件の1つです

この「保険料納付要件」を満たせなければ、障害年金の申請はできません。

Aさんは他の専門家に相談したところ、この要件を満たせず「無理」と断られたそうです。

年金事務所でも同様でした。

申請をあきらめようとしていたところ、藁にもすがる想いで当社に相談していただいたのです。

以上の状況だけで、簡単に年金受給が「無理」と判断していいのか・・・

そこで、

何か、解決の糸口がないか、より詳しくヒアリングを続けたのです。

ここだけの話、何が問題なのか

保険料納付要件は、初めて医療機関を受診した前日のタイミングで確認されることになっています。

受診日以降に急いで保険料を納めても要件を満たしたことになりません。

これを許してしまえば、誰も保険料をまともに納めようとしないでしょう。

病気になってから保険料を納めればいいわけですから。

Aさんは、この前日のタイミングで判定したところ、要件を満たせていません。

また、20年、同じ病院に通院している状況でした。

医療機関の記録上は、ずっと継続して通院しています。

別の医療機関を受診しているわけでもないので別の日が初診日となる余地もありません。

このような状況下で、どのように保険料納付要件をクリアーするか、専門家の腕が試される問題点はここです。

ここだけの話、みんなのねんきんではこう対処した!

これまでの就労状況・病歴を詳しく確認すると・・・

解決の糸口を探るべく、とにかく粘り強くこれまでの就労状況・病歴を詳しく確認することから始めました。

20年前に受診した際は、「仮面うつ病」との診断。

服薬など治療の効果があり、受診してすぐに就労ができるようになっていました。

以降、15年間、服薬治療を受けながらも正社員として就労を継続されていました。

しかし、5年前にご家族が亡くなり、そこから症状が悪化して退職。

働き続けることができなくなったのです。

このタイミングで病名が「統合失調症」へと変わっていました。

そして現在まで、無職の状態が続いている状況でした。

15年間働き続けたなら治ったのでは?

突破口はAさんの就労期間にありました。

「仮面うつ病」と診断されても、実際に15年間も就労継続できた期間があります。

しかも、正社員としての就労で、障害者雇用による就労ではありません。

つまり、

この期間は健常者の方と同等の就労を行っていた期間になります。

ここで、

障害年金を考えるうえで、「社会的治癒」という概念があります。

社会的治癒とは、一定期間の「社会活動」ができた期間があれば、社会通念上「治った」期間となり、その後、再発した際に同じ病名でも別の病気とみなされる概念です。

別のコラムでも取り上げたことがあるので詳しくは以下を参考にしてください。

国民年金vs厚生年金 実例から考えるこんなに違う障害年金の保障内容

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この概念に則って考えれば、Aさんが就労した15年間で社会通念上「治った」と評価でき、統合失調症として新たに別の病気を発症したとも考えられます。

このように考えれば、統合失調症として再発した時点が新たな初診日になるはず。

とはいえ、

社会的治癒は、社会保険制度においての概念でしかなく、法律なり政令・省令のような具体的な規定がないのです。

具体的な規定が無い中で、この概念をどう主張していくか、専門的な知識が必要になります。

そこでひとまず、

15年間の正社員就労期間=「社会的治癒」の期間 とできないかと考えました。

ただし、Aさんは就労できていましたが、継続して治療を受けていたことは事実です。

このような状況下で「治った」として判断してもらえるかは微妙です。

現在の障害状態につながる原因はどこにある?

20年前の受診時と現在では、傷病名が「仮面うつ病」。現在は「統合失調症」として異なっています。

ここで、

障害年金の初診を判断する際、「相当因果関係」が確認されます。

相当因果関係とは

社会通念上相当と認められる限度で原因結果の因果関係を認めることをいう。現在の障害状態という結果と原因となる傷病との間で因果関係があるかを確認する

つまり、現在の障害状態と最初の傷病との間に相当因果関係があると判断されれば、最初の傷病の受診日が初診日となります。

「統合失調症」の発症が「仮面うつ病」と相当因果関係があるなら、初診日は20年前になります。

しかし、繰り返しになりますが、Aさんは20年前に「仮面うつ病」と診断された日の前日においては保険料納付要件を満たせません。

仮に、現在の統合失調症の原因が別にあれば、当初の初診日を変えることができるかもしれません。

ここで、

病歴を確認すると、「5年前に家族を亡くしたこと」により症状の変化があります。

現在の「統合失調症」の原因となるとなる事象があった可能性があります。

担当医師にも確認すると、「家族を亡くしたこと」を契機に症状に変化があったため、病名変更となっていました。

これで「仮面うつ病」と「統合失調症」の相当因果関係がないことになります。

わずかながらも年金請求の糸口が見えてきました。

年金請求の結果は「不支給」となるも・・

そこで、

今回、実際に最初に受けた20年前の診断日でなく、5年前に診断を受けた日を初診日として障害年金請求を行うことにしたのです。

Aさんの場合、これなら保険料納付要件はクリアできます。

まずは、

社会的治癒があったとして、15年間正社員として就労ができていたことを立証します。

正社員として社会保険に入っていましたから、年金記録上は厚生年金加入期間。

この年金記録で証明可能です。

併せて、当該期間のお仕事の様子などを具体的に病歴・就労状況等申立書に表現していきました。

次に、

当初診断された「仮面うつ病」と現在の「統合失調症」に相当因果関係がないことの立証も必要です。

仮面うつ病では、治療の効果があったことを訴えました。

統合失調症の契機となった家族を亡くしたことも資料として添付しました。

統合失調症の発症後は、治療を受けても就労不能の状態が改善しなかった点も強調しました。

そして最後に、

これらをまとめて年金請求を行いました。

結果は不支給

認められなかったのです。

もちろん、この結果は受け入れられません。

当社は5年前を初診とする今回の年金請求は理論的にも立証の観点からも年金決定されてしかるべきと考えていたからです。

すぐに不服申立を行いました。

すると、

特に追加書類の提出は求められず、不支給処分の変更がされました。

つまり、初診日が5年前とした障害年金が逆転で決まったのです。

申請が難しいとあきらめようとしていた状況から、障害年金が認められ、かつ、5年前までの過去の遡り分(数百万円)もまとめて受け取ることができました。

決定まで時間がかかりましたが、Aさんには、すごく感謝していただけました。

ここだけの話、今回のまとめです

「他で障害年金は無理と言われた」

そのような状況でも当社は簡単には諦めません。

情報が不確かなままで断定的な判断をしないようにしています。

障害年金を受給できるか否か、その人の人生を左右する重大な権利行使だからです。

そして、粘り強く対応することで解決の糸口が見つかることがあります。

精神障害では、初診日を「精神的なことについて人生で初めて病院を受診した日」が原則です。

今回、原則以外の初診日が認められましたが、相当の専門知識・技量が必要でした。

この点、

2023年6月の社会保障審議会でも初診日についての問題が挙げられていました。

実務の専門家が考える課題はこれだ!社会保障審議会で浮かび上がった障害年金制度の今

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精神障害では、発症から障害状態に該当するまで、長時間かかることがあります。

人生で初めて受診した日から20年も経っていると、現在の障害状態との関係性も薄いと判断されてもいいのかもしれません。

実状に応じた審査が行われることが望まれます。

今回の事例でポイントになったのは以下の点です。

  • 障害者の権利行使に影響するからこそ少ない情報で判断しない
  • 専門家として詳しい就労状況・病歴を確認するのは当たり前
  • 病歴が長いと、症状や病名に変更がある。小さな変化を見逃さない
  • 社会的治癒の概念、初診日の相当因果関係など専門的知識で証明していく

正直に言うと、今回のケースでは、障害年金が認められる確証はありませんでした。

私も不安がありながら進めている点を正直に伝えることで、逆にAさんからは信頼していただけました。

やはり「諦めない」ことが改めて重要と感じました。

ただ、ご注意ください。

今回紹介した「社会的治癒」については、専門的な知識が必要になります。

素人の方がこの概念を主張して簡単に障害年金が認められるものではありません。

手続きに不安があるなら、障害年金の専門家にご相談されることをおすすめします。

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岡田真樹 みんなのねんきん社労士法人代表

大学卒業後メーカーに勤務。仕事中に左手を機械に巻き込まれ、親指以外を失う大ケガを負う。転職後、障害者雇用の枠で聴覚障害・発達障害・精神障害・身体障害を持つ方々と一緒に働いた経験を持つ。障害年金の手続きを自ら行なったことから年金制度に興味を持ち、社会保険労務士試験に合格。2020年よりみんなのねんきん社会保険労務士法人で実務の最高責任者を担い、2021年に代表就任。