世にも奇妙な返戻物語 後編 ー2021春の障害年金プロジェクトX編ー

【みんなのねんきん】岡田社労士

岡田真樹

みんなのねんきん社労士法人代表

今回のコラムは年金実務者向けの内容です。

ここだけの話、今回はこんな話です

今回も前回に続き、返戻の事例をご紹介します。

2020(令和2)年度、みんなのねんきん社労士法人では様々なケースで障害年金請求を行いました。

請求書を提出した時点で手続き代行作業の一区切りがつくのですが、返戻により対応を求められると、審査がつまずいたような印象があり、正直いい思いはしません。

しかし、ポジティブに考えるようにしています。審査の途中で、一度提出した請求に対して対応することができる…これは、チャンスと言って良いからです。

今回はその中でも対応に苦労した返戻事例を1つ、どのように対応したかを書いてみようと思います。

メモ

「返戻」とは窓口で受付した提出書類の内容や添付書類に不備があったため、年金機構から書類が戻されることです

前回の返戻事例はこちらをご覧ください。

世にも奇妙な返戻物語 前編 ー2021春の障害年金特別編ー

岡田真樹みんなのねんきん社労士法人代表 今回のコラムは年金実務者向けの内容です。 Contents ここだけの話、今回はこんな話ですここだけの話、こんな症状・こんな事例です事例1 印鑑が違うから返戻? ...

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ここだけの話、こんな症状・こんな事例です

こんな返戻事例でした

2020(令和2)年9月に提出した「うつ病」での事後重症請求について、そろそろ結果がでてもおかしくない11月に返戻がありました。

内容は、初めて診断を受けた(以下、「初診」といいます)医療機関の証明が請求傷病の「うつ病」と相当因果関係がないとのことでした。

依頼者からご相談を受けた時から、この方は症状が大変重く、話すことも辛い状況でした。

健忘の症状も出現しており、ご病気の経過を確認すること自体が大変でした。

発病されたのは平成6年。その時には大きな病院で受診されていたので、病院名も確認できました。

初診の病院名がわかっても、25年以上前ですので、病院に記録が残っていないことも覚悟しました。

幸運にも、その病院には、記録が残っており、「受診状況等証明書」を取得することができました。

依頼者は、症状のため不安感が強く、通院先を頻繁に変える傾向がありました(このような傾向を「ドクターショッピング」といいます。)

ご本人からの聴き取りで、平成6年以降の通院歴は健忘の症状もあり、思い出すことができません。

現在のかかりつけの病院まで、多くの医療機関を受診された可能性があることだけがわかりました。

そこで、これまでの通院歴を確認するために、直接病院に確認することにしました。

ところが、現在通院している病院から順番に遡っていってみましたが、平成18年以前の情報は確認できません。

平成6年から平成18年までのことをご本人に再度確認しても、病状がひどく、思い出すことができませんでした。

事後重症請求による障害年金の受給権は、請求書を提出して受付された時点で発生し、翌月分から支給の対象となります。

つまり、提出が1ヶ月遅れるごとに1ヶ月分の年金が支給されず、依頼者に不利益が生じます。

通院歴の調査に時間をかけるか、このまま書類を提出して年金の権利を生じさせるか、どちらを優先するかを決めなくてはいけません。

ここまでの手続きで、初診の「受診状況等証明書」と現在の症状の「診断書」を取得することはできました。不足している書類はありません。

そこで、受給権の発生に向けて、障害年金請求書を提出することにしました。

「病歴・就労状況等申立書」では、確認できた事実を記載。

平成6年から平成18年までの期間は、病状はあったが、通院先は「不明」と記載して提出。

ところが・・・、返戻されてしまったのです。

平成6年の病院以降、平成18年までの通院歴が確認できないため、請求傷病の「うつ病」と相当因果関係がないとのこと。

平成18年に通院していた病院が初診となる可能性があり、改めて「受診状況等証明書」の提出を求められました。

みんなのねんきんではこう対処した!

チャーミー
平成18年に通院していた病院が最初に診断受けた病院で何が問題なの?

みなさんはそう思うかもしれません。

実はここで1つ大きな問題がありました。

仮に平成18年の医療機関を初診とした場合、障害年金がもらえないことが確定してしまうのです。

なぜか。それは、保険料納付要件が関係しています。

メモ

「保険料納付要件」は初診のタイミングで直近1年間に未納期間が無いこと、または、これまでの年金加入歴における未納期間が全体の3分の1未満であることが必要です。

平成18年を初診とすると依頼者には未納期間があるため、要件を満たせません。

ですので、このまま返戻の指示通りに書類整備を行うと、障害年金が認められないというわけです。

実際には平成6年に発症し、その症状が継続していました。その間も病院名はわかりませんが通院していました。

対応策はたった1つ。

とにかく、平成6年~平成18年の期間も通院していたことを証明するしか道はありません。

幸い再提出までの時間に猶予がありますので、請求者ご本人の体調を見て、医療機関名を思い出してもらうようにしました。

メモ

返戻には、書類を整備した後の再提出に期限が設定されている場合もありますが、今回の返戻では、初診日の再確認ということで、再提出の期限はありませんでした。

地道な作業が始まりました。

年金記録から当時の就労先を、住所から地域を限定。

そして、その地域にある医療機関をリストアップし、通院したことがある病院名を1つ1つ確認していきました。

その中に何件か通院していた病院があったことを思い出していただくことができ、さらにはリストアップしていなかった、廃院している病院名も思い出してもらえました。

病院名がわかれば、記録が残っているかその医療機関1件1件に確認するだけ。それを書類で証明できれば、平成6年から今の「うつ病」が関係していることを確認できます。

ところが・・・

思い出していただいた、どの病院も記録が残っていませんでした。

病院による証明書があるのと、ないのでは、審査への影響が大きいのです。

正直ピンチでした。諦めるしかないのか・・。

記録が無いものはもはやしかたがありません。

再度の聴き取りでも初診は平成6年であることは間違いありません。

依頼者のためにも、諦めるわけにはいきません。

(・・岡田は・・・諦めなかった・・(田口トモロヲ風))

そこで、病歴・就労状況等申立書の内容を聴き取ったものに修正し、記録がなかった病院については、「受診状況等証明書が添付できない申立書」を作成しました。

それに加え、私の意見書も添付することにしました。

こういった場合、返戻の通信欄を再度確認し、審査する側が何を知りたいのか何を確認したいのか審査する側の視点に立ってその趣旨を読み取ることが大事です。

今回の返戻の趣旨は、初診日について判断するための補強の資料を必要としているわけです。

そこで、意見書には、平成6年以降も症状があり、通院していたことの信ぴょう性が高くなる事実を書きました。

請求者の個人に関わる内容が含まれますので、詳しくはここで書けませんが・・・。

結果、無事に平成6年の初診が請求書傷病である現在の「うつ病」との関係性が認められ事後重症の障害年金を受給できることとなりました。

病院に記録が残っておらず、あきらめそうになりましたが、審査する側の視点に立つことで、よい結果となる対応ができました。

ここだけの話、今回のまとめです

今回も、当社であった返戻の事例について書いてみました。

  • 返戻は、再度与えられたチャンスと考えて成長につなげる
  • 返戻によって審査する側が何を確認したいのかその趣旨を読み取る
  • 病院に記録がなく書類がなくともあきらめない

障害年金における返戻は審査する側からの再チャレンジのメッセージと受け取れます。

ただ、今回のように返戻の指示によって結果的に依頼者が不利益を受けるケースもあるわけです。

仮に機械的に返戻の指示に対応した場合、審査する側が何を確認したいのか把握していないことになり、専門家としては失格でしょう。

繰り返しになりますが、返戻によって、審査する側が何を求めているのかをしっかり読み取ることが大事です。

言い換えれば、年金を請求する側だけでなく、審査によって判断する側の視点にも立つことが重要ということです。

病院からの書類が不十分な場合でも、審査する側が判断できるものがあれば、認めてもらえる可能性が出てきます。

諦めてはいけません。

今後も、しっかり、両者の視点を持って障害年金請求を行っていこうと思います。

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岡田真樹 みんなのねんきん社労士法人代表

大学卒業後メーカーに勤務。仕事中に左手を機械に巻き込まれ、親指以外を失う大ケガを負う。転職後、障害者雇用の枠で聴覚障害・発達障害・精神障害・身体障害を持つ方々と一緒に働いた経験を持つ。障害年金の手続きを自ら行なったことから年金制度に興味を持ち、社会保険労務士試験に合格。2020年よりみんなのねんきん社会保険労務士法人で実務の最高責任者を担い、2021年に代表就任。