ここだけの話、今回はこんな話です
今回も当社への相談事例からお話したいと思います。
当社では、電話の他にメール、LINEによるチャット相談でカウンセリングを行っています。
色々な方からご相談がありますが、お話を聞いていて、すぐには障害年金を申請できない・・・という内容があります。
2020年は、コロナ禍により、お仕事が困難であったり、ウィルスへの不安であったりなど理由から精神科を受診される方が増えているそうです。
「うつ病と言われました。何か保障はありますか?」との相談も増えてきました。
確かに「うつ病」は、障害年金の対象となる病名ですが、「うつ病」と診断されただけでは、障害年金がもらえるわけではありません。
なぜでしょうか?具体的に見ていきましょう。
ここだけの話、こんな症状・こんな事例です
通院開始して間もないご相談は意外に多い
ご相談を受けて、カウンセリングの最初に、発病から初めて病院に行った日を確認します。
そうすると、「昨日、初めて病院に行きました。」「先月、受診してから休職してます。」のように通院を開始してから間もない場合があります。
障害年金は、初診日から1年6カ月経過しないと申請できないルールがあります。
障害の程度は、病気の種類や治療法によって時期によってバラつきがでてしまいます。
一定の障害状態になった時点で障害年金を請求するようにすると、請求できる時期がその人ごとにバラバラになってしまい、公平性が保たれなくなってしまいます。
そのため、公平性な扱いをするため、初診日から1年6カ月経過した日を「障害状態を確認する日」<障害認定日>と法で定めています。
ですので、通院から間もないと障害年金についての相談には、「初診日から1年6カ月経過しないと申請できません。」の説明で終わってしまうことになります。
せっかく相談してくださったのにそれでいいのでしょうか。
当社では、障害年金の申請ができる時期ではないとしても、今、できそうなことをアドバイスしています。
こんなお話をさせてもらってます
まずは、具体的な症状についてお聞きします。
どんなきっかけがあったのか、どのような症状が辛く、通院に至ったのか、医師に告げられた傷病名などを確認します。
お聞きした症状から長期的な通院の必要性があると判断した場合、現在の通院先が定期的・継続的に通院できるかについて確認します。
精神疾患の場合、通院期間が長くなることが多いためです。
障害年金の申請までに最低でも1年6カ月通院する必要があります。
ところが、
- 「片道2時間かかっている」
- 「移動手段がない」
- 「待ち時間が長い」
- 「医師が苦手なタイプ」
などを理由にして通院が途絶えてしまう場合があります。
通院が途絶えると適切な治療もできず、病状が悪化してしまう恐れがあります。
障害年金が申請できるまでに利用できる制度がある
障害年金が請求できるまでに利用できる制度についても確認します。
健康保険の傷病手当金
職場の健康保険に加入していて病気で休職しているときには、傷病手当金を受給できる可能性があります。
要件は、医師に「働くのは無理である」と判断された状態で、4日以上休んでいることが必要です。
すると、休職中の生活保障として、給与の約3分の2が支給される制度です。
傷病手当金は最長で1年6カ月まで受給することができますので、障害年金の申請ができるまでは、手当金による保障を受けるのも手です。
もし、1年以上健康保険に加入していたのなら、仮に退職しても継続して傷病手当金を受給できる仕組みもあります。
実務の現場では、
たいていの場合、休職時の給与について年次有給休暇で対応しています。
年次有給休暇を消化してしまった後には、傷病手当金に切り替えるのが一般でしょう。
傷病手当金の申請は、一般的に会社が行ってくれますから、健康保険加入者の権利として、会社に相談です。
自立支援医療
自立支援医療制度は、精神疾患について医療費の自己負担額を軽減する公費負担医療制度です。
この制度を利用すると、患者負担分が原則1割となります。
また医療費の月額には上限金額が設定されていて、それを超えて請求されることはありません。
所得に応じて、上限金額は、世帯所得により定められています。
都道府県や指定都市が実施主体として運用されていますので申請窓口は、市区町村の障害福祉課などが窓口になります。
精神障害者保健福祉手帳
手帳の交付は長期にわたり日常生活又は社会生活への制約がある方を対象としています。
取得できると、
- 公共料金等の割引(NHK受信料の減免)
- 税金の控除・減免(所得税、住民税の控除、相続税の控除)
- 鉄道、バス、タクシー等の運賃割引(JRや航空各社は除く)
などのサービスが受けられます。
申請には、初診日から6カ月経過していることが条件となります。
都道県知事が審査することになっていますので、申請窓口は、自立支援医療と同じく市区町村の障害福祉課などになります。
どの制度を使うにしても医師の協力が必要
障害年金の手続きもそうですが、傷病手当金、自立支援医療、精神障害保険福祉手帳を利用するためには、医師に証明書類(診断書)の作成を依頼するので医師の協力が必要になってきます。
継続・定期的に通院できていないと、医師も症状が把握できず、書類を書くことができません。
とすれば、これらの制度の利用も難しくなってしまいます。
その他にも、様々なケースがあります。
病気を理由に退職された場合は、雇用保険の失業給付の仕組みや、医療費が難しい場合は、無料低額診療や生活保護の制度についてもお話する時があります。
障害年金の申請ができるまで個々に応じて、利用できる制度はないか、障害年金を実務で扱う立場であれば、関連制度を確認しておかないといけません。
ここだけの話、今回のまとめです
今回は、通院開始してから間もない相談について、当社の対応をまとめてみました。
ご相談を受けて、お話している内容は、
-
定期的・継続的に通院できる医療機関か
-
傷病手当金、自立支援医療、障害者手帳の利用はできるか
-
いずれの制度も医師の協力が必要になること
といったところです。
うつ病などの精神疾患は、症状に波があり、良くなったり悪くなったりを繰り返していきます。
良くなったときに無理してしまい、反動で悪化させてしまう…。
治療に長い期間かかってしまう要因かもしれません。
長期化してしまうと、症状だけでなく、経済的にも問題が出てきます。障害年金のほかに利用できる制度が多くありますからご自身が使える仕組みの情報収集が欠かせません。
まずは、定期的・継続的に通院できる医療機関を選び、これらの制度を利用して、経済的負担を軽減していただけたらと思います。
私も引き続き相談者に寄り添って、カウンセリングを行っていきます。
岡田真樹
みんなのねんきん社労士法人代表