諸事情により現在は生活保護受給者からのご相談は受け付けておりません
ここだけの話、今回はこんな話です
みんなのねんきんでは、生活保護を利用している方から障害年金の相談を受けることが多くあります。
そもそも生活保護を利用しながら障害年金を受け取ることができるのでしょうか?
仮に受け取ることができるとして、両方全額受け取れるのでしょうか?
減額されてしまうのであれば、障害年金を申請する意味はあるのでしょうか?
今回は生活保護と障害年金の関係を解説しました。
詳しく見ていきましょう。
ここだけの話、こんな症状・こんな事例です
みんなのねんきん社会保険労務士法人では、生活保護を利用されている方からの障害年金受給のご相談を受けることがあります。
生活保護と障害年金の関係については、以前のコラムで取り上げたことがあります。
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以前のコラムでは生活保護と公的年金制度の違いに触れ、生活保護があるから公的年金の保険料を納めないことに対する私の意見をまとめました。
今回は逆に、既に生活保護を受けている方からの障害年金相談について取り上げます。
意外に思うかもしれませんが、生活保護利用者からの相談って結構あるんです。
生活保護を利用中の方が障害年金の手続きを行う時に、みんなのねんきんではどのように進めているか解説します。
ここだけの話、何が問題なのか?
まず、素朴な疑問として生活保護を受けている人が別途障害年金の請求をできるのか?というものがあります。
結論、障害年金の3要件を満たしていれば、受給することは可能です。
生活保護受給者が除外されるルールが無いからです。
障害年金受給の3要件
- 初診日要件
- 障害の原因となった傷病について初めて医者に掛かった日(初診日)に公的年金制度に加入していること
- 保険料納付要件
- 初診日の前日時点で、一定の保険料が納められていること
- 障害認定日要件
- 障害認定日に法律で定められた障害状態であること
それでは、障害年金の請求が可能だとして、両方丸々受給できるのか?そもそも生活保護を受けているのに障害年金を受給するメリットはあるのか?
生活保護を利用している方が障害年金を請求する際の両者の関係が問題となります。
ここだけの話、生活保護と障害年金ってどういう関係?
生活保護があるのに障害年金を請求する意味は?
まずは、そもそも、生活保護利用者が障害年金を申請する意味はあるのでしょうか?
ここで、
以下の理由で生活保護を利用する場合に障害年金を受け取る意味があると言えます。
病気やケガで仕事ができなくなり生活困難になった。療養中の生活のために生活保護を利用するがあくまで一時的である
生活保護はあくまで貧困状態において一時的に利用する制度です。
生活状況が立て直せれば生活保護を抜けることができます。
一方、
障害年金の保障は、障害状態が続く限り、生涯にわたります。
つまり、
あくまで一時的に生活保護を利用し、療養中に障害年金の権利を確保する
生活保護を抜けた後も障害年金を受給しながら、無理しない範囲で就労していく
このように早期に生活保護を抜けて自立するために障害年金を受給する意味があると言えます。
ちなみに、
生活保護を受給中はお金の出入りに厳しい監視の目がありますが、障害年金は働いて収入があったとしても原則として、減額されません。
生活保護と障害年金って両方もらえる?
それでは、生活保護を受給中に障害年金が決定した場合、その両方を全額受給できるのでしょうか?
ここで、
生活保護は、決められた最低限の生活費から自身が稼いだ収入を差し引いた金額が保護費として支給されます。
この収入には、障害年金などの公的年金も含まれます。
つまり、障害年金を認められたとしても、その全額を2つの制度から受給することができません。
障害年金の分、生活保護費から差し引かれることになるからです。
生活保護受給者の障害年金請求手続きのメリット
生活保護利用者が障害年金を申請する場合、一般には知られていないメリットがあります。
2つのメリットをご紹介しましょう。
メリット1 障害年金の手続きにかかる費用
まずは、障害年金手続きにかかる費用について。
障害年金の手続きにおいて、医師に診断書などの書類の作成を依頼することが必須です。
診断書作成には費用がかかりますが、この費用について、生活保護制度より扶助が受けられます。
さらには、
我々社会保険労務士に障害年金の手続きを依頼した場合の費用も、生活保護以外の収入を得るための手段にかかった経費として認められることがあります(自治体によって、対応が違うことがあります)。
つまり、経費認定を受ければ、実質的に生活保護制度が専門家への手続き代行手数料の負担を肩代わりするため、障害年金の申請を専門家に依頼しやすくなるというメリットがあります。
メリット2 障害状態を証明しやすい
つぎに、生活保護を受けていること自体がメリットになる点について。
障害年金を受け取るためには、障害年金の3要件のなかで、「障害状態」に該当していることが必要です。
それを証明するために、医師の診断書が必要ですが、合わせて今の日常生活がどれだけ困難な状況かを訴える必要があります。
ここで、
障害年金の2級相当の状態は、
必ずしも他人の助けを借りる必要はないが、日常生活は極めて困難で、労働により収入を得ることができない程度のもの
(出典:国民年金・厚生年金保険 障害認定基準 3頁)
と示されています。
つまり、
生活保護を利用しているということは、就労ができないことの裏返しであり、実際そのような方は多いです。
また、生活保護の申請の際には、自治体の担当者が自宅に訪問し、生活状況を調査します。
つまり、
生活状況の調査の結果、生活保護を利用できているわけで、独力では生活ができないことの裏返しでもあります。
就労ができず、独力での生活も難しい、これはつまり、障害年金制度が想定している障害状態と合致する点が多くなります。
このように生活保護を利用する方は費用負担の点で障害年金の手続きのハードルが低く、障害年金制度が定める障害状態と合致する点が多くあるため、障害年金を受け取れる可能性が高いことになります。
これらが生活保護利用者が障害年金手続きを行ううえでのメリットと言えます。
ここだけの話、みんなのねんきんではこう対応する!
障害年金の見込みがあるなら積極的に対応
みんなのねんきん社会保険労務士法人では、生活保護を利用している場合であっても状況をしっかり伺ってベストな道を一緒に考えます。
これまで相談を受けた方の中には、生活保護と障害年金は重ねて受給できないため、意味がないとの説明を受けている方がいました。
たしかに金額の面ではご指摘のとおりですが、早期に自立するという意味では障害年金受給の意味があるのは上で説明したとおりです。
このような事情があってか、障害年金の権利があっても、ずっと申請しない方もいました。
長い時間が経ってしまうと、医療機関の記録が破棄されてしまうこともあります。
こうなると、申請に必要な書類が取得できず、手続き自体できなくなってしまいます。
また、
社会保険労務士に手続代行を依頼する手数料について、自治体によって対応が違うことがあります。
つまり、経費としての認定が難しいと言われる場合があるのです。
この場合は、自治体の担当者に説明・確認を行う必要があります。
なぜ手続き代行を依頼する必要があるのか
専門家への手続き代行費用が経費として認められていることの厚生労働省の通達の存在
手続き代行のフォローの範囲など
ご自身でこれらの説明が難しい場合、みんなのねんきんが代わりに説明することがあります。
私の経験上、丁寧に説明すれば、ほとんどの自治体で専門家への手続代行費用を経費として認めていただけています。
みんなのねんきんでは、事前着手金もなく、手続きにかかった費用も実費です。
経費として認定しやすいと、ある自治体の方に言われたことがあります。
生活保護を抜ける見込みがない方に対しては・・・
これまで、生活保護を一時的に利用し、その後は障害年金の支えで自立する場合のお話をしました。
ただ、中には生活保護を抜ける見込みが無い方もいらっしゃいます。
そのような方には、
障害年金の申請を行うことで生活保護の障害者加算が付く場合があり、加算に該当する場合は、障害年金の申請を勧めています。
加算額は、地域によって違いますが、障害者加算により、生活保護費が増えることになります。
障害者加算が該当するためには、以下のいずれかに該当していることが必要です。
- 身体障害者手帳:1~3級
- 精神障害者保健福祉手帳:1・2級
- 障害年金:1・2級
精神障害者保健福祉手帳が3級の方でも、障害年金で2級となると、保護費に障害者加算が付くことになります。
保護費の増額になるわけですから、申請を行う意味が出てきます。
障害年金の初回受け取りに注意
障害年金が決定されると、原則として偶数月の15日に支給されます。
生活保護費は、毎月の月初ころに支給されることが多いです。
障害年金が決定され、初めて国から支給される時、生活保護側の保護費が調整されていないことがあります。
この場合は未調整の額を後日返金するよう自治体から要請されます。
初回の年金については、このような事態が生じる可能性があるので、弊社では事前に依頼者に説明することが欠かせません。
弊社が実際に経験した事例ですが、未調整の生活保護費を使い込んでしまい、結局我々に支払ってもらう手続代行手数料にも支障が生じたことがあります。
障害年金の初回受け取り時には特に注意しなければいけません。
ここだけの話、今回のまとめです
今回は生活保護の利用と障害年金の関係についてまとめてみました。
ポイントは以下のとおり。
- 生活保護に至った原因が障害によるなら早期に自立するための障害年金は意味がある
- 決められた最低限の生活費から障害年金の支給額を差し引いた金額が生活保護費として支給される
- 生活保護を受けていることで障害年金手続き上のメリットがある
- 生活保護を利用している方の相談を多数こなしているみんなのねんきんに相談すべき
社会保障制度による生活保障には、公的年金以外にも労災保険や雇用保険などいくつもの制度があります。
制度上、それらを重複して受け取れないこともあります。
しかし、複数の制度の権利を確保しておくことは、国からの保障の選択肢が広がることになります。
その中でも最後の砦となるのが生活保護制度。
生活保護を利用する原因が障害状態にあるなら、障害年金の申請で早期の自立を目指すべきです。
ところが、誤解から障害年金を申請していない方がいます。
お話を伺うと障害年金を申請する意味があるのにもったいないと感じることもあります。
また最近では、自治体のケースワーカーの方から直接みんなのねんきんに相談が寄せられることもあります。
自立を目指すためには、障害年金が必要と思われているケースワーカーの方がいらっしゃるからです。
自治体からの相談でも対応していますのでお気軽にお問い合わせください。
最後に、一人でも多く、障害年金が必要な方が障害年金を受給できるよう、これからも情報を発信していければと思いました。
岡田真樹
みんなのねんきん社労士法人代表