ここだけの話、今回はこんな話です
このような相談が寄せられた場合、当社では
無理と言われた原因はなにか?
受給に結びつく可能性はないか?
こんなことを探りながら、詳しくお話を伺うようにしています。
そして、他社で無理と言われた案件でも年金に結びつけた事例があり、別のコラムで同様の相談事例をご紹介したことがあります。
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今回は、他で、「遡及請求は絶対できない」と言われたものの、みんなのねんきんで手続きを代行した結果、無事に数百万円の「遡及請求」が認められた事案をご紹介します。
詳しくみていきましょう。
ここだけの話、こんな症状・こんな事例です
「遡及請求」とは通常の年金請求とどう違う?
一般的に障害年金の請求は、現在の障害状態を判定してもらい、将来に向かってこれからの年金を受け取っていくこととなります。
一方で、
「遡及請求」とは、文字通り過去に遡り、障害状態であったことを証明する請求になります。
過去に遡るため、年金が認められると、過去の分がまとめて支給されます(もちろん、将来に向かってこれからの年金も受け取れます)。
ただ、「遡及請求」は、昔のことになるため難易度が高いのです。
以前、コラムでまとめたことがありますのでこちらも参考にしてください。
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さて、
遡及請求を行うためには、初めて医師にかかった日(初診日)から1年6ヶ月が経過した日(障害認定日)において、法律で定められた障害状態にあること(障害認定日要件)を証明することが必要です。
例えば、遡及請求する現在が、初診日から10年が経過していれば、8年6ヶ月前のことを証明しなければなりません。
したがって、遡及請求は資料を揃えられるかという点で難易度が高いわけです。
医師から「うつ病」と言われたが「発達障害」もある事例
さて、今回ご紹介する事例です。
「うつ病」に悩むAさん。
みんなのねんきんへの相談の前に、他の専門家に遡及請求を相談したところ、無理と言われたそうです。
ここで、
「うつ病」で遡及請求を考える場合、障害認定日時点で障害状態が軽かった場合(例えば、就労できていた等)は遡及請求は困難と言わざるを得ません。
当初相談を受けた際、Aさんもそのような状況ではないかと想像しました。
しかし、「うつ病」と初めて診断を受けた6年前からずっと通院しているとのこと。
さらに詳しい病歴を確認すると、15年ほど前に一度だけ受診しその時に「発達障害」と診断されたとのことでした。
ここが、問題点でもあり、解決の糸口にもなったのです。
ここだけの話、何が問題なのか
2以上の精神疾患がどのような関係にあるかという問題
まず、障害年金を考えるにあたり、初診日の考え方は「人生で初めて精神疾患について医師の診断を受けた日」となります。
すると、
15年前のたった一度の「発達障害」診断時が初診日となるのか、6年前からずっと通院している現在の「うつ病」診断時が初診日なのかが問題となります。
「人生で初めて」ということを素直に考えれば15年前となりますが、今の診断はうつ病であり、それは6年前。
障害年金請求において一体どちらが初診と判断されるのでしょうか。
この点、
過去に厚生労働省より通知(「知的障害や発達障害と他の精神疾患が併存している場合の取扱い【給付2011-121】)が出ていて、その取扱いが整理された経緯があります。
そこには、
「発達障害」と診断された後に「うつ病」を発症した場合、同じ疾病として取り扱う
とされています。
つまり、今回のケースでは、「うつ病」も「発達障害」も同じ疾病ですので、初診日も「発達障害」で受診した時点となることになります。
そして、
遡及請求するにあたり、15年前の一度のみの受診が初診日となると、そこから1年6カ月時点では受診していません。
つまり、障害認定日の証明ができないことになります。
この点、
「うつ病」と「発達障害」の取扱いについて、最初に相談を受けた他の専門家もご存知だったはず。
このことを理由に「遡及請求は無理」と判断した可能性が高いと思われます。
障害年金の仕組みが精神疾患の発症の流れに対応できていないという問題
障害年金申請の6割が精神障害と言われています。
ところが、障害年金制度が想定している「発症から障害状態への流れ」が精神疾患に対応できていないという問題があります。
ここでいう流れとは、
発症・初診 → 通院・治療 → 障害認定日に障害状態
というもの。
怪我などの外部障害であれば上の流れに合いますが、精神疾患の場合は違います。
精神障害の状態が重くなったときには発症・初診よりかなり時間が経過していることが多いのです。
みんなのねんきんにおいても、請求時点からかなり前の受診日が初診日と判断されなかったことがあります。
2023年6月に開催された、国の審議会(社会保障審議会年金部会)でも精神障害特有の初診日の問題が指摘されています。
Aさんの事例では15年前の初診となると、障害年金の受給要件を満たせないかもしれない・・。
このような問題を抱えながら、みんなのねんきんがどう年金に結びつけたのか、解決編はCMのあとで!
ここだけの話、みんなのねんきんではこう対処した!
柔軟に考えることで解決の糸口を見つける
相談時、Aさんには、
とお伝えしました。
障害年金の審査の最近の傾向や、審議会でも問題点が提起された現状から、年金受給の可能性はあると感じたからです。
このとき、私自身も改めて、上でご紹介した厚労省の通知を読み込んでみました。
一旦知識となったものでも、思い込みなどで、誤って理解していることもあるからです。
通知には、
これらを目安に発病の経過や症状から総合的に判断する
との文言がありました。
これはつまり、「発達障害」から「うつ病」を発症した場合でも総合的に判断すれば、別個の疾病と判断される余地もあるわけです。
そのためには、発病の経過や症状をどう主張するか。
硬直的に考えるのではなく、いかに柔軟に考えるか、今回のケースで感じたことです。
入念なカウンセリングでわかったこと
Aさんからの手続代行の依頼を受け、早速、入念なカウンセリングを始めました。
これまでの発病の経過を細かに確認する作業です。
すると、
Aさんが15年前に1度だけ受診した時は、何か症状があった訳でもなかったとのこと。
周囲に勧められ、深く考えずに受診したようです。
詳しい検査もなく、薬の処方もなかった。
そんな状況ですから、Aさんは定期的に通院することもなかったのです。
そして時は流れ、9年後(現在から6年前)に「うつ病」の診断がされました。
この9年間、精神疾患の症状はありません。
6年前になって初めて、不眠や気持ちの落ち込みなどの症状があったことが医療機関の記録より確認できたのです。
不安を感じながらも年金請求してみると・・
そこで、みんなのねんきんでは、「うつ病」受診の6年前を初診日として、障害年金請求を行うことにしました。
さきほどの厚労省の通知の表面的な解釈では、15年前の受診時が初診日となりますが、「総合判断」を根拠に真っ向勝負することにしたのです。
医師には、6年前から1年6カ月時点の診断書と現時点の診断書、2枚を作成してもらいました。
実は、請求書類をまとめる過程で「発達障害」受診の15年前について、医療機関から記録は取れなかったのです。
通院期間もなく、一度のみの受診ですので記録が残っていることの方がレアです(しかも診療録の保存期間は5年と決まっています)。
その際の治療行為がなかったこと、以後9年もの長期間、治療がなかったことを訴えて請求書類にまとめました。
とはいえ、若干の不安もありました。
初診日について、年金事務所から再度確認するよう指示があるのでは?と思ったからです。
また、審査が長期間になることも覚悟していました。
ところが・・・、
その後、年金事務所からの照会もなく、スムーズに遡及請求が認められ、約420万円の障害年金が支給されることになったのです。
ここだけの話、今回のまとめです
「出る前に負ける事考えるバカいるかよ」
アントニオ猪木が試合前に言っていた言葉です。
「もし負けたら」と質問したレポーターは、張り手をされていました。
最初から「無理」とあきらめていたら、可能性はゼロになります。
解決の糸口はないか?今までの知識で本当に正しいのか?
最初から諦めてしまうと、私も猪木に張り手を貰うことになるでしょう。
今回、諦めないことで知識を再確認することになりました。
その再確認によって、可能性を見出すことができました。
今回の事例でポイントになったのは以下の点です。
- 障害年金の審査において「発達障害」と「うつ病」は、同じ疾病とされる厚労省の通知がある
- 一見、無理だと思う難しい案件でも解決の糸口がないか、さまざまな角度から検証すべき
- 障害年金のカウンセリングは丁寧にヒアリングをすることに尽きる
Aさんは当初「やはり難しいですよね・・・」と言っていました。
専門家の立場から、可能性があることを伝えたところ、Aさんも自身も障害年金請求に前向きになっていただけました。
やはり「諦めない」ことが改めて重要です。
難しい案件だからといって、我々が頂く手続き代行手数料が増額するわけではありません。
逆境を跳ね返して、年金が決まった時のよろこびは、何物にも変えられません。
特に、遡及請求が認められると依頼者が受け取る年金額も大きくなります。
これからも依頼者の期待に応えられるよう、障害年金を追求してまいります。
岡田真樹
みんなのねんきん社労士法人代表